ついにシャープが台湾企業の鴻海に買収されましたね。
私は経営者を詳細に評価できる専門的な知識があるわけではありませんが、今ではシャープ「元」 社長となった高橋氏が優秀な経営者だったかというと、残念ながら会社の立て直しに失敗し買収されてしまったという結果を見る限りそうではなかったということになるのでしょう。
ところで私は以前、『「仕事が終わったら自分で仕事を探せ」と言う上司がダメ上司な理由』という記事を書きました。
そして以下の記事を読んだ時、高橋氏がまさに私の記事で指摘した「ダメ上司」に当てはまっていることを知りました。
12日付で退任:シャープ社長を退任した高橋氏の罪と罰 – ITmedia ビジネスオンライン
社長就任会見では「社員が自分で判断して自分でチャレンジし、上からの指示を待たない。そういう企業風土に変えたい」と抱負を語り、社員の意識改革を実現することで経営再建の道が開けると強調した。
「社員が自分で判断して自分でチャレンジし、上からの指示を待たない。」というのは一見、いかにも素晴らしい理念のように聞こえますがこれは実際には自分の職務責任を果たさず仕事を社員に丸投げしているだけの無能経営者、管理者なのです。
上記のビジネスオンラインの記事中で、退任にあたって関係者から以下のように言われていることが何よりの証拠です。
シャープ関係者は「最初は会社を変えてくれると期待したが、高橋さんは自分では何ひとつ決断しなかった。社員には指示を待たずに自分で判断しろと訴えたが、結局は社内や銀行、鴻海と誰かの指示を待っていたのは高橋さん自身だったのではないか」と語った。
会社の上の人間が「指示待ち人間」で、社員には「自分の考えで動け」というのでは全くお話になりません。
私が以前の記事で言ったとおり、経営者、管理者、社員にはそれぞれの役割があります。
そして大きな組織になればなるほどそれぞれの役割を守るべきなのです。
ましてや、日本のブラック企業にありがちな「社員一人ひとりが経営者目線で~」などと言うのは本当にナンセンスな話なのです。
オーストラリアでは一人ひとりが職務に忠実
オーストラリアでは社員一人ひとりのポスト(ポジション)には必ず「ポジション・ディスクリプション」というものが作成されています。
略してPDと呼ばれることもよくあります。
このPDにはそのポジションに求められる職務が全て記述されています。
それぞれの社員はこのPDに記されている職務を実行する能力と、それを忠実に実行することが求められます。
逆に言うと、PDに載っていない仕事はやる必要がないし、求められることも無いのです。
もしPDに書かれている以外の仕事が求められる事になった場合はその新しい職務をPDに書き足さないとなりません。
この書き足しの作業はその人を管理している一人のマネージャーが勝手にできることではなく、必ず人事にもお伺いを立てる必要があります。
もし必要ならばその追加の職務に応じて給料の変更も行われます。
そして将来、そのポジションの人が会社を辞めて代わりの人を募集することになった時はこのPDが応募条件となります。
このようにオーストラリアの会社ではそれぞれの職務が厳格に決められているため、日本のように「人手が足りないから他の部署の手伝いをしてくれ」などと簡単に頼まれることもありません。
ましてや「経営者目線で仕事しろ」などと言われたらみんな
「なんで社員が経営者の立場になって考えないとならないの?」
「そんなの私の仕事ではない」
と言うでしょう。
ここが会社の命令とあれば何でもやらなければならない日本の会社と決定的に違うところです。
当然、管理者は部下の管理の仕事をする
ちなみに私が働いているオーストラリアの会社では管理ソフトを使って管理者が部下の仕事を全て把握しています。
そして一つ一つの仕事(タスク)にかかる時間を考慮しながら部下に仕事を割り振っていきます。
ここでは「部下が勝手に仕事を考えて上司に無断で仕事を始める」などということは起こりませんし、そのようなことが入り込む余地もありません。
ましてや、「自分で仕事を探せ」などと要求する上司は絶対にいません。
部下が上司に相談もなく勝手にやっている仕事など把握できるはずがありませんし、勝手に仕事をやられては誰がどれだけのキャパシティが残っているのかさえ分からなくなり、仕事の割り振りもできなくなります。
そして彼らも会社のさらに上の人に報告をしないとならないわけですが、その時にきちんと部下の仕事を把握していなければ困ることになるのです。
「あなたのチームは今何の仕事をしているのか?」「進捗状況は?」と上の人から聞かれた時に「部下に全て任せているので分かりません」などという管理者は見たことがありません。
このような管理者はもはや管理者とは呼べませんし、そんな管理者は給料を払う価値もないので会社には必要ありません。
管理者なのに管理していないのだから当然です。
あえて言うならば自分の職務を放棄した、ただの無責任な給料泥棒です。
このように書くといかに「自分で仕事を探してやれ」という管理者が自分の職務を放棄しているかが分かると思います。
経営者と管理者はきちんと給料分の仕事をしなさい
再度言いますが、「経営者目線」が必要なのは経営者だけです。
社員は「社員の目線」で社員として必要なことをするべきなのです。
こんなことはわざわざ言うまでもないほど当然なことなのですが、それが当然ではないのが日本なのです。
ある程度組織が大きくなってきたら指示を出して全体をまとめる管理者と、管理者の指示を聞いてそれを的確に処理する実行者(社員)が必要です。
経営者や管理者ばかりで実際に現場の仕事をする社員がいない会社は成り立ちませんし、もちろん社員ばかりでまとめる人間がいない会社も成り立ちません。
このようなことは誰でも分かることです。
しかし、これをきちんと理解しないないのが
「社員は言われたことだけをやっていればいいわけではない」
「自分で考えて行動しろ」
「経営者の目線に立って仕事しろ」
「自分の仕事が終わったら仕事を探せ」
などと言う日本のブラック企業なのです。
社員は言われたことだけをこなせばいいし、それが最も重要で基本の職務なのです。
あ、それから「指示待ち人間はいらない」というのもありますね。
アホも休み休み言ってほしいものです。
平社員は指示を受けて行動するのが仕事です。
指示を受けた仕事については「自分で考えて」ベストを尽くして実行しそして結果を出すのが社員の職務です。
このことを分かってない人が多すぎます。
さらに言うならば、社員は社員の仕事に相応の給料を、そして管理者は管理者の仕事に相応の給料をもらっているはずです。
もし本当に社員に経営者の仕事についても考えさせるのならば少なくとも経営者の給料プラス社員の給料を与えるべきでしょう。
そして経営者や管理者は社員に仕事を代わってやってもらっていることになるので、その分は当然減給するのが筋です。
「社員には指示を待たずに自分で判断しろと訴えた」高橋氏が結局は、「自分では何ひとつ決断」せず、「鴻海と誰かの指示を待っていたのは高橋さん自身だったのではないか」と言われたという事実がこのような経営者がダメだという事を物語っているのです。
ところでなぜ日本の職場では「指示を待たずに動け」だの「経営者視線を持て」だの言われるのか分かりますか?
それは日本の雇用形態が世界でも特殊な「職務無限定」だからです。
「職務無限定」が何か?
以下の記事を読むと分かります。
>>【他部署の仕事の手伝いなんてまっぴらごめん】自分の仕事が終わっても帰れないのは誰のせい?