私は先週まで5週間の休暇を取って日本に一時帰国していました。
日本で友達に会った時に、「今回は何日間の休みを取ってきたの?」と聞かれ、「5週間」と答えると、「5日じゃなくて5週間かよ!」ととても驚かれました。
私もオーストラリアに行く前は日本で5年間働いていたので一般的な日本の会社の待遇とのあまりの違いに驚く気持ちはとてもよく分かります。
日本で5週間の休暇を取って帰って来たら恐らく席はないでしょう。
私は現在のオーストラリアの会社で既に7年間働いていますが、この会社では5年以上働くと長期就業休暇をもらえます。
今回はその長期休暇の一部を使って5週間の休みを取りました。
そういうわけで、今回は私の今の会社で取得できる休暇の種類や日数などについて紹介します。
最初に断っておきたいのですが、日本にも色々な待遇の会社があるように、オーストラリアでも会社によって休暇のシステムも違います。
私の会社は待遇が良い方だとは思いますが、他の会社であってもそれと比べて極端に悪いということは無いと思います。
年次有給休暇
通常の有給は年に20日間分与えられます。
日本の場合は最初の年は10日でその後徐々に増えていくというような形式の会社がよくありますが、私の会社では最初の年から20日です。
ただ、この20日を12ヶ月で割った1.67日が1ヶ月働く毎に積み上げられていくシステムになっています。
そのため、働き始めてすぐに20日の休みを取ることは出来ません。
もちろん、消化しきれなかった有給は次の年に繰り越しになりますし、繰越年数に制限はありません。
ただし、あまり貯まりすぎると会社から「あなたは最近有給を取っていませんね。できるだけ早く有給を消化してください」と警告が来ますが・・・
貯まった有給はいつ取得しても良いですし、有給は労働者の権利なので誰かに気兼ねすること無く簡単に申請できます。
有給を取得したい時は最初に自分の直属の上司に相談してから申請します。
どうしても仕事のスケジュール上都合が悪い時は、「来週にずらしてもらえないか?」とごく稀に言われることはありますが、スケジュールはこちらも把握しているので無理にそこで取ろうとはしませんから、基本的には二つ返事で許可が出ます。
上司に一度話して大丈夫そうであれば、あとはオンライン上のフォームに期間を入力して送信するだけ。
送信された申請フォームは上司が「許可」の処理をし、その後人事に送られます。
メチャクチャ簡単。
年次有給休暇以外の休暇申請も全てオンラインで申請、処理されます。
ちなみに、退職した時に消化されていない年次有給休暇がある場合、その人のその退職時の給与額を元に時給を算出し、時給×未消化時間で計算した分が全て払い出されます。
これは法律で決められているので、雇用者は社員の未消化の有給は退職時に必ずお金で支払わないとなりません。
このような理由から、オーストラリアの会社では従業員の貯まった有給は会計上、負債としてカウントされます。
だから会社は有給を貯め込んでいる従業員に対して、「早く取れ」と催促してくるわけです。
退職した人が有給を使ってなかったら全て会社の利益になる日本とは全然違います。
私も日本で働いていた会社を退職した時に相当数の有給が残っていましたが、その申請をすることなどできそうもない雰囲気でした。
今にして思うと、有給の買い取りをしてもらえない日本の会社の制度は本当に不公平というか、給料泥棒に近いものがあると感じます。
給料泥棒と言うと一般的には働かない社員のことを指しますが、日本の会社は労働者の権利である有給を取り上げ、さらにはサービス残業などもさせるのですから会社側のほうがもっと酷い給料泥棒ですね。
長期就業休暇
「長い期間働いてくれた人にはご褒美として長期の休暇をあげましょう」というのがこの休暇です。
年次有給休暇と同じく、働いている期間に応じて日数が徐々に積み上げられていくようになっていて、1年働くと1.5週間分積み上げられます。
ただし、勤続期間が5年以上にならないとこの休暇を申請することは出来ません。(オーストラリアでは7年目からの会社が多いようです)
つまり、勤続5年目で取る場合は合計で7.5週間の休みを取ることが出来ます。
貯まった休みは一気に取っても構いませんし、分割して取っても構いません。
また、5年目以降も同じペースで積み上げられていくので、例えば10年目まで使わずに貯めて一気に取得しても問題ありません。
さらに、「休みの間の給料を半分にして倍の休暇を取る」ということもできます。
例えば、7.5週間の休みが貯まった時点で7.5週間分の給料を貰って15週間の休みを取ることができるということです。
この長期就業休暇は勤続7年目以降からは退職した時にお金で支払ってもらえますが、それ以前に辞めてしまうと貯めた分は全部パーになってしまいます。
名前が表す通り、長期間働いた社員だけが恩恵を受けられる休暇です。
ちなみに、私の同僚はこの休暇を使ってつい最近、6ヶ月のホリデーを取り始めました。
羨ましい!・・・でもそんなに休んでしまうと、帰ってくる頃にはもう仕事のことなど忘れてしまっていそうです(笑)
私的理由休暇
ちょっとおかしな日本語訳になってしまいましたが、私の会社では英語で”Personal leave”と呼ばれています。
この休暇も年次有給休暇と同じく1年に合計20日間与えられ、1ヶ月働く毎に1.67日積み上げられていきます。
私的理由休暇も未消化分は繰り越しされていきますが、年次有給休暇と違い、退職時には払い出しされません。
さて、この休暇をいつ使うのかというと、以下のようないくつかの項目に分けられています。
- 自分が病気の時
- 自分の家族が病気などでケアが必要な時 ー この「家族」に含まれるのは自分の妻や夫、自分の子供、自分の妻や夫の両親、自分の孫や兄弟や親戚までも含みます。つまり、家族の誰かが風邪で看病が必要な場合は普通に休みが取れるということです。
- 自分の医者の予約がある時
- 宗教的、文化的理由の時 ー 例えば中国人の新年(旧正月)やムスリムのラマダーンがこれに当たります。これは様々な人種が集まっているオーストラリアならではの休みですね。このタイプの休みが無い会社もあるのではないかと思います。私の会社では年に5日間まで申請できます。日本人の私の場合、「働いてはならない」という日が文化的、宗教的には無いわけですが、取らなければ損(笑)なので天皇誕生日や憲法記念日などで取得しています。日本で祝日の日であれば許可されます。
日本では、「病気の時に取るのは有給休暇」である会社が一般的でしょうし、中には、「有給は病気でどうしても働けない時にだけいただくもの」などというブラック企業もあるようですね。
オーストラリアでは有給休暇はあくまでもホリデーで使うものであり、社員が心や体を休めてリフレッシュして戻ってきて、また良い仕事をしてもらうためにあるものです。
そのため、病気の場合にも休めるように年次有給休暇とは別に病欠休があるのが普通です。
また、家族の看病や病院への付き添いなどでも休みを認めてくれるところなどは、いかに従業員とその家族が大切にされているかが分かると思います。
「従業員は『人材』ではなく、『人財』であると考えています」などと寝ぼけたことを言う割には社員が過労死していたりする日本のブラック企業には、「社員を会社の財産だと思って大切にするというのはこういうことだ」と教えてあげたくなります。
忌引き
忌引と言うと誰かが亡くなった時だけになってしまうので、この訳は少し間違っているのですが・・・
この休みは家族が生命に関わる重大な病気や怪我に直面した時に取ることが出来ます。
もちろん、家族が亡くなった時にも適用され、必要になった時ごとに5日間までの休みが与えられます。
有給育児休暇
育休は1年以上勤務している従業員に与えられます。
出産後に18週間分の育児休暇が取得できます。
もちろん夫のほうも取得できます。
出産後に一気に18週間休むことも出来ますし、分けて取ることも出来ます。
出産前の本人の通院や妻の通院の付き添いが必要になった場合は、この育児休暇ではなく前出の私的理由休暇を取ることができます。
休暇取得後にフルタイムで復帰するのが難しい場合はパートタイムでも働けるような制度もあります。
無給育児休暇
「有給休暇事情」という題名にしているのに無給休暇を紹介するのも変ですが(笑)
有給育児休暇を使い切ってさらに休暇が必要な場合は無給で52週間まで休みを取ることができます。
もちろん、会社に戻ってきたときの席は保証されています。
私は無給の休暇は取ったことがありませんが、妻の出産の時に有給の育児休暇は取らせてもらいました。
日本の会社では、「出産するなら辞めろ」と言われたり、「育児休暇を申請しにくい」とか、「育児があるから早く帰りたいけれど、同僚や上司の視線が厳しくてとても出来ない」などということがあるようですが、オーストラリアの会社ではまずそういうことはありません。
少なくとも私の会社では育児休暇後、普通に仕事に復帰しています。
人道目的休暇
何か緊急事態の時に取れる休暇です。
例えば森林火災などで家族で避難したり、また、ボランティアで森林火災の消火活動に参加する時などです。
少し話が脱線しますが、オーストラリアでは夏になると乾燥している地域では頻繁に森林火災が起こり、田舎の地域では大きな問題になっています。
日本では森林火災というのはあまり馴染みがないのでどれくらい怖いのか想像するのは難しいと思いますが、風が強い日などは時速100キロというものすごいスピードで火が燃え移っていきます。
こうなると車でも逃げ切れません。
「まだ大丈夫だろう」などと考えてぐずぐずしているとあっという間に火に囲まれてしまい、逃げられなくなります。
実際、オーストラリアでは消火活動に当たる人も含め、毎年森林火災で亡くなる人が出ます。
この休みはこういった非常事態の時に与えられるものです。
以上が私の働いているオーストラリアの会社の休暇制度の概要です。
実は、私は会社の待遇を自慢したくてこの記事を書いたのではありません。
その理由は・・・以下の記事に続きます。
>>【日本人は働き過ぎは嘘?】「年間祝日数世界一だから日本人は休み過ぎ」は本当か?