「祝日日数世界一だから日本人は休み過ぎ?」は本当かを検証してみる

前回の記事「私が働いているオーストラリアの会社の有給休暇の種類を一挙紹介!」では私が現在働いているオーストラリアの会社の休暇の種類や日数について紹介しました。

読んでもらえれば、日本の会社と比べてどれだけ認められる休暇が多いか、どれだけ被雇用者の権利が多く、それがきちんと守られているかが分かると思います。

オーストラリアの友人などに聞く限り、私の会社はオーストラリアの中でも比較的待遇が良い方ではあるようですが、かと言って他の会社でもこれと比べてそれほど悪いというほどでもありません。

ましてや、日本の会社のように、「年次有給休暇20日」などと契約には書くくせに実際には、「ほとんど取らせてくれない」「取れる雰囲気ではない」などという会社はこちらでは聞いたことがりません。

私のオーストラリアの一つ前の会社においても取得したいと思った時にダメと言われることはまずありませんでしたし、むしろいつもとても簡単に許可が出ました。

オーストラリアが世界的に見て特に休みが多いとか労働者が優遇されているという話は聞いたことがないので、他の欧米の国においてもそれほど差異は無いのではないかと思います。

特にヨーロッパの国では夏季休暇が1か月以上もある国もあるようなので、むしろオーストラリアよりも労働環境が良いところはいくつもあると思います。

実際、オーストラリア人は結構多くの人が、「オーストラリア人は働き過ぎ。ヨーロッパの国のようにもっと休みを増やすべきだ」と考えているようです。

日本のブラック会社を経験した私からしたら今の待遇でも天国のように感じるので、「何、冗談言ってるんだ・・・」と思うわけですが、彼らは大真面目のようです。

~日本の実質的な休暇数は先進国最低レベル~

さて、ここで最近目にした記事を紹介したいと思います。

祝祭日数世界1位!日本人は休みすぎ!? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

 実は日本の祝祭日の日数は、諸外国と比べて群を抜いて多いのだ。バカンス大国と呼び声の高いフランスが年間9日、米国が10日だが、日本は欧米勢より1週間以上長い17日。同じアジア勢の香港が13日、シンガポールが11日と続く。

最初、記事のタイトルを見て、「実は日本人は祝日がたくさん休めているんだぞ」と主張する話かと思ったのですが、そうではありませんでした。

ちゃんと有給休暇についても比較しています。

 対して有給休暇についてはどうか。

フランスでは有休付与数、消化数とも30日で100%消化している。ほかの上位はスペイン、ブラジル、オーストリア、イタリアと総じてヨーロッパが多く取得している。日本は付与数20日、消化数10日。取得率50%。韓国は日本よりさらに少なく、アジアはヨーロッパに大きく水をあけられている。

記事の中にある図によると、日本は祝日数で世界で1位(図1)、有給消化数(図2)で11位となっています。

有給消化日数で順位を下げてはいるものの、祝祭日と有給を合わせた休暇日数合計(図3)ではなんと、日本は6位になっています。

調査対象としている国が結構少ない(オーストラリアも入っていません)ような気もしますが、これだけ見ると、「日本人は働きすぎだと思っていたけれど、休暇日数では世界的に見て結構多い方なんだ。よくヨーロッパの国はたくさん休暇が取れると聞くけど、実際には似たようなものなんだな」という印象を受ける人が多いのではないかと思います。

しかしそう簡単には騙されない人達も結構いるようで、「普段の残業時間を考えたらやっぱり日本人は働きすぎだろう」という意見も結構ネット上で見かけました。

全くその通りで、日本にはタイムカードを押してからのサービス残業などという、正確な調査データも出せないような労働がまかり通っているので、いくら休日数が多いなどと言ったところで年間総労働時間では先進国中でワースト1位とか2位に入るのは確実であると思います。

そして恐らく実際には、残業時間を考慮しなかったとしても、有給休暇+祝日の合計日数で日本は世界6位どころか最下位のレベルなのです。

~年次有給休暇だけが休暇じゃない~

「え?なんで?プレジデントオンラインの記事に書いてる6位というのは嘘なの?」と思うかもしれません。

説明しましょう。

前回の記事で書いたとおり、私の会社では年次有給休暇は20日あります。

そして、その他にもたくさんの種類の有給が認められています。

上記のプレジデントオンラインの記事で比較しているのはまず間違いなく、各国の会社の年次有給休暇のみです。

リストに乗っている国々の中にはオーストラリアと同じく、年次有給休暇とは別に病休が認められている会社がある国もたくさんあるでしょう。

ヨーロッパの国であれば、私の前回の記事でも紹介したような長期就労休暇がある国もあるでしょう。

そして、育児休暇だって充実しているはずです。

日本ではやっと男性の育児休暇が認められる会社が出てきたという段階です。

これらの各国の病休などを含めた有給の日数と取得率を比較したら、恐らく日本の総合順位は相当下のほうになるのは確実です。

例えば、私の会社では入社5年目で長期就労休暇が7.5週間分(土日を入れた日数)取れるわけですが、入社5年目での1年間分の有給を計算すると、

  • 年次有給休暇:20日 (繰越制限無し、未消化の有給は退職時に100%払い出しされるので消化率は100%とする)
  • 病休:7日 (年間付与日数20日。3分の1を取得したと想定)
  • 長期就労休暇:8日 (1年間分の積み立て分)

これだけで35日になり、これにオーストラリアの年間祝日数の10日を足すと合計で45日となります。

プレジデントオンラインの記事の図3では祝日数+有給消化数においてフランスが39日でトップになっていますが、このように様々な有給を含めれば(リストにオーストラリアがあったとしたら)オーストラリアがダントツのトップになるわけです。

しかし、前にも述べたとおりヨーロッパの国々はオーストラリアと同じような休暇制度が採用されている国がたくさんあると思うので、このような計算をした場合、全体的にはどの国もプレジデントオンラインの記事に載っている日数よりも大幅に数字が増えるでしょう。

その一方で病休などを認めている会社が殆ど無い日本(恐らく韓国も)は数字に全く変化が無く、ヨーロッパ諸国と比べると圧倒的な差をつけられるでしょう。

祝日と年次有給休暇の日数だけを取り上げて、「日本は世界でも休みが多い国だ」などと主張するのは笑止千万です。

上記のプレジデントオンラインの筆者がこのような海外の国の様々な種類の有給について知っていて敢えて触れなかったのか、単に知らなかったのかは分かりませんが、いずれにしても大手のメディアに掲載されている記事であっても簡単に鵜呑みにしてはならないという良い例です。(テレビや新聞も同じです)

~労働環境だけは西欧化しない日本~

最初にも書きましたが、日本の会社では「年次有給休暇20日間」などと書かれたりしていても、 それがフルに取れる企業はほんのごく一部です。

日本では、「有給は病気になってどうしても働けないときに取るもの」などという姿勢の会社(あるいは社畜)もたくさんありますし、「風邪で倒れそうでも出社しろ」などと言う上司がいる会社もたくさんあるでしょう。

上記のプレジデントオンラインの記事の中の統計においても、実際には半分程度しか取れていないと出ています。

私も日本の会社を辞めた時に有給を使い切っていたことはありませんでした。

日本ではこのような働き方や、休暇が取れない社会は当たり前のように思われていますが、一旦、日本の外から日本の状況を眺めてみるといかに日本が異常であるかということが一目瞭然なのです。

私の前回の記事を読んで、「オーストラリアの会社はたくさん休めていいな」と思った人も多いと思います。

しかし、世界的に見ると、オーストラリアの会社の待遇がありえないほど素晴らしいのではなく、日本の会社の待遇がありえないほど酷いということなのです。

日本の社会は西欧化されたと言われて久しくなりますが、労働環境の面においては欧米の足元にも及ばない状態なのが現実なのです。