
突然ですが、私はオーストラリアで仕事をし始めてからというもの、同僚に「あなたの仕事を手伝いましょうか?」ということを聞いたことはありません。
部下のスケジュール管理は上司の仕事
まず私の今のオーストラリアの会社でどのように仕事が進められるかを簡単に説明しましょう。
まずチームリーダーがそれぞれのチームメンバーにタスクを割り振ります。
そしてタスクを受けたチームメンバーは優先度が高いものから順にこなして行きます。
スケジュールを管理するのはチームリーダーの役目なので、常に進捗度合いをチェックしています。
リーダーは一人で期限に間に合わなそうなタスクがあれば再度分割したタスクを他の人に割り振ります。
このような感じで仕事が進められていくのですが、スケジュールが管理されていると言っても大抵の場合はそれぞれのタスクは余裕を持って計画されていますし、期限内でどの程度のペースで進めていくかは個人に任されているのでストレスに感じたことはありません。
なので、「今日は結構進んだからあとは明日に回して今日は適当に休憩して切り上げるか」という感じで近くのカフェにコーヒーをゆっくり飲みに行ったりすることも結構あります。
そして自分の帰る時間になったら「また明日~」と言ってさっさと帰ります。
帰る時間はそれぞれの始業時間が異なるのでみんなばらばらです。
他の同僚や上司が仕事をしてようと全く関係なく帰る時間になったら帰ります。
最初に書いたとおりスケジュール管理は上司がするものなので、自分が帰るときに他の同僚が大変そうに仕事をしていても「手伝おうか?」などと聞いたりしませんし、逆に同僚から「手伝ってくれない?」とお願いされることもありません。
退社の前に一言聞くのが「社会人のマナー」?
日本の会社の場合、他の同僚や上司がまだ働いているのに自分だけ先に帰る場合、「お先に失礼します」と言って帰るのは相当な罪悪感があると思います。
そして退社前に「なにか手伝うことはありますか?」と聞くのが「社会人としてのマナー」とよく言われます。
念の為にそういう事を言っているサイトを検索してみたらすぐに見つかりました↓
退社前・残業の注意事項 – 新入社員の為のビジネスマナー講座
退社するときの挨拶 は「何か手伝うことはありますか」の一言を忘れずに。
毎日帰る度にわざわざこんなことを聞かなければならないなんて苦痛以外の何物でもありません。
こういう訳の分からない「社会人としてのマナー」とか「他者への思いやり」などという日本に昔から伝わる悪しき習慣のためにどれだけの人が苦労させられていることか。
そもそも、こういうことを帰る前に聞かなければならないおかしなマナー自体が定時退社をすることへの障害となっています。
「帰る前に上司にいちいちお伺いを立てないと帰れない→毎日となると聞きにくくなってくるからやることもないのになんとなく残業」といった感じです。
部下は勝手に仕事を決めてやってはならない
「手伝うことはありませんか?」と聞かれてすんなり帰らせてくれる上司ならいいですが、定時を過ぎたにも関わらず他の仕事をやらせようとする上司や、それどころか
「仕事が終わったのなら帰っていいというものではない。仕事がないなら自分で探して作れ」
などと言う上司もいるらしいです。
ここまで来ると、もう冗談もほどほどにしろと言いたくなります。
自分の仕事が終わったら帰っていいに決まってます。
最初に書いたとおり、オーストラリアでは部下のスケジュールを立てるのは上司の仕事です。
もしその上司が「自分で仕事を作れ」などと言おうものなら「私の上司は部下のスケジュール管理が出来ていないから彼と話し合って対策をして欲しい」とその上のマネージャーに訴えるレベルです。
これは上司が「部下を管理する」という自分の職務を放棄して「自分で決めて仕事をしろ」と言っているわけであって、その上司は自分自身の存在価値を否定しているのと同じです。
部下が勝手に決めて仕事をしていいのなら上司は必要ありません。
また、「自分の頭で考えない社員はいらない」などと言う人もいるらしいですが、社員は「自分に与えられた仕事」を自分の頭で考えてこなすのが仕事です。
会社が利益を上げるためにどのようなことが必要ななどと考えて仕事を作り出すのは経営者と管理職の仕事です。
組織にはそれぞれの役割があり、それぞれがそれに従って仕事を行うべきですし、その職務内容によって給料も変わってきます。
軍隊と同じです。一兵卒が指揮官の仕事などしませんし、そんなことをしていたら組織が成り立ちません。
百歩譲って、平社員に経営者や管理職の仕事を求めるのならそれなりの給料を払ってからにするのが筋です。
与えられていない仕事を自分で作り出すのは平社員の仕事ではありませんし、もしそんなことをそれぞれの部下が勝手にやりだしたら果たしてその上司は部下を管理しきれるのでしょうか?
・・・いや、そもそも管理を放棄しているので勝手にやってもらっていいと考えているのでしょうか?
まあ、こういう上司に限って部下が勝手にやった結果その部署の業績がアップすれば「自分の成果」で、失敗すれば「勝手にやった部下の責任」にするのでしょうが。
個々が決められた役割をきちんとこなすのが組織
そもそも「自分の仕事が終わったら他の仕事を探してやれ」って・・・なんなんですか?この無限仕事地獄は?
まさにブラック企業で話題になった某居酒屋チェーンオーナーの迷言「死ぬまで働け」です。
オーストラリアの会社では絶対にそんな馬鹿げたことは言われません。
社員は上司(会社)から与えられた就業時間内でこなせるだけの仕事をすれば良いですし、それ以上やることも期待されていません。
そしてそれを毎日こなしているということはそのポジションの仕事を実行する者に会社から期待されている職務を立派に遂行しているということになるのです。
それ以上の仕事を探す必要なんてどこにもありません。
そういうわけで私はオーストラリアでは自分の仕事以外に余計なことをしたこと(特にしたいとも思いませんが)はありません。
それでも私の毎年の勤務評価はとても高いです。
「あなたはいつも素晴らしい仕事をしていて会社にとって無くてはならない資産です。ありがとう」と言われます。
日本でこれだけ会社に感謝される社員ってどんな人でしょうか?
家庭も自分の健康もかえりみず残業と休日出勤をして会社のために尽くす社員でしょうか?
会社に心身共にボロボロになるほど尽くした挙句、過労死してしまう人は今の日本では珍しくもありません。
しかし、それだけ会社のために尽くして死んだ社員に対してでさえ、私がオーストラリアの会社で受けているほどの感謝を述べている会社など今まで見たことがありません。
むしろ会社の責任逃れのために頭を絞って醜い言い訳をしている場面しか思い出せません。
そもそも社員を奴隷のように使い捨てる会社が社員に感謝するはずありませんが。
そういう会社に限って社員のことを「人材」ではなく「人財」などと表面だけのキレイ事を言うのです。
そして社員が死んでも何食わぬ顔でのうのうと贅沢な暮らしをして生きているのがブラック企業の経営者なのです。
こんな日本の会社に尽くしても時間の無駄、人生の無駄です。
こんなストレスのある環境で働いていると寿命も確実に縮まっていきます。
もし縮まった寿命の分の時間を算出できるものなら日本の会社は残業代だけでなく短縮された分の人生の時間に対しても給料を払うべきです。