私には子供が二人いるのですが、他の多くの親と同じく、名前を付ける時には、「ああでもないこうでもない」と妻と一緒に相当苦労しました。
ちなみに、私自身の名前は日本ではいくらでもある名前なのですが、英語圏の人にとっては、とても聞き取り辛く、覚えにくく、発音しにくいという三重苦の最悪の名前なのです。
親に付けてもらった名前を「最悪」などと言うのは罰当たりだと思うので念のためフォローしておくと、私は日本で使う分には自分の名前が嫌だと思ったことはありません。
しかし、日本の外に出て初めて、海外ではいかに私の名前が面倒であるかということに気付かされたのです。
ところで、日本ではキラキラネームが話題になって久しいですね。
これはオーストラリア人の友達に聞いたのですが、オーストラリアでも最近は昔では考えられないようなおかしな名前が増えてきていると言っていました。
昔ながらの名前とか、純和風な名前ではなくてもいいのですが、私は自分の子供にはキラキラネームは絶対に付けたくないと思っていました。
それから、英語圏に住んでいるからと言って英語の名前にして漢字を無理矢理当てはめるということもしたくありませんでした。
これはあくまでも私の個人的な意見なのですが、やはり日本人が聞いて、「何その名前?」と思われるような名前は子供がかわいそうだと思いますし、また、日本人であればやはり日本人らしい名前がいいと思っていました。
そういうわけで、私がオーストラリアに住んでいることもあり、子供の名前は日本語で普通にあって、英語圏の人にも優しく、おかしな意味で取られにくい名前をつけたいと思っていました。
しかし、以下でお話しますが、これが中々大変なことなのです。
ら行の文字が入る名前
まず、「ら行」が入る名前は私は避けました。
一つ目の理由は、日本語の「らりるれろ」は英語のRでもLでもない、その中間のような発音であることです。
つまり、日本語のら行の音は英語には無いのです。
可能であれば、日本人が発音する名前とオーストラリア人が発音する名前ができるだけ近いほうが良いと思っていました。
二つ目の理由は、RとLの表記の違いがややこしいからです。
日本のパスポートに記載されるローマ字の名前は「ヘボン式でなければならない」と定められているため、ら行は全部Rから始まることになります。(*追記参照)
例えば、リカだったらRikaにしないとなりません。
ちなみにオーストラリアでは、夫婦両方、またはどちらかがオーストラリアの永住権を持っているかオーストラリア国籍である場合は、子供はオーストラリア国籍を持つことが出来るようになっています。
なので子供は合法的に日本とオーストラリアの両方の国籍を持ち、両方の国のパスポートを取ることができるわけですが、オーストラリアのパスポートを取る時は上記のような名前の場合、RかLか自由に選べるようになっています。
まあ、リカだったらどちらのパスポートもRikaにしておけば表記的にはいいかもしれませんが、もしリサという名前だったら英語にもある名前なのでここは英語式にLisaにしたいところです。
しかし、上記の日本側の制約により、日本のパスポートではLisaではなくRikaにしないとならないのです。
これでは子供も「どっちが本当の名前なの?」と混乱する可能性があります。
かと言って、日本語のスペルに合わせて英語の名前をRikaにしたら今度はオーストラリア人が間違えそうです。
「ケイ」が付く名前
テニスの錦織選手は名前が圭(けい)ですね。
ケイという短いものだけではなく、ケイスケとかケイタとかケイコとか、ケイが付く名前は結構あります。
日本語でケイという名前をヘボン式ローマ字に倣って書くと、Keiになります。
しかし、英語だとケイと読んでもらうにはKayと書くのが一般的なようです。
Keiと書くと大体「カイ」か「キー」と発音されてしまいます。
日本人からすると、「え?Kayだとカイになってしまうのでは?」と思うかもしれませんね。
これが日本人にとって英語のややこしいところです。
例えば、「鍵」は英語で「キー」ですが、スペルはKeyなので、Keiもキーになってしまうのは何となくわかるのですが・・・
あと、ケイではありませんが、女の子の名前でミカというのも同じような問題があります。
ミカだとローマ字ではMikaとなりますが、これだとオーストラリアでは大体、マイカと呼ばれてしまいます。
英語にある名前でも・・・
ケンと言う名前は日本語で普通にありますが、英語でもKenは普通にある男性の名前です。
こんな風に、英語と日本語の両方にある名前を子供に付ける人は英語圏に住んでいる日本人には結構多いです。
女の子だったらハナとかもそうです。
英語だとハナという名前は一般的なので違和感がありません。
ただハナの場合は、日本語のパスポートではHanaとなるわけですが、英語だと一般的には”Hanna”とnが2つになるので、パスポート上ではまた混乱が生じそうです。
ケンは英語を話す人からしてもごく普通ですし、上に書いたようなパスポート上のスペルの違いも日本語と英語で出ません。
そういう意味で、ほぼ完璧な名前に思えます。
ところで、昔オーストラリアで知り合った日本人の友人に正に、「ケン」という名前の人がいました。
ケンジでもケンタロウでもなく、ケンです。
冒頭にも書いた通り、私の名前は英語圏の人には厄介な名前なので、「ケンなんて覚えられやすくていいなー」と思っていました。
しかし、ある時彼が教えてくれた体験談を聞いてびっくりしてしまいました。
場所がどこだったかを失念したのですが、役所だったかで彼の名前をフォームに書いた時に、「ニックネームじゃなくて本当の名前を書きなさい。日本人だったら日本語の名前があるでしょ?」と言われたらしいのです。
その担当者はケンというのは英語にしか無い名前であって、日本語にはそのような名前がないと信じて疑わなかったそうです。
彼がいくらケンが本名だと説明しても信じてもらえず、結局、家に一度帰ってパスポートを持って行って証明する羽目になったそうです。
このようなことは滅多にないでしょうし、ここまで心配していたら付ける名前が無くなってしまうので考え過ぎは良くないですが・・・
英語で一般的な名前というのも時には問題が起こるものなんだなと考えさせられる話でした。
相手の言語で別の意味に捉えられる可能性のある名前
日本語で良いと思って付けた名前が英語だとおかしな意味に聞こえてしまう場合もあります。
例えば、日本では最近、雄大(ユウダイ)というような名前を付ける人が結構いると思います。
私は個人的には、この名前は将来、大きな人間になりそうで好きなのですが、英語を話す人がこの名前を聞いたらびっくりします。
英語だとなんと、You die!(死ね)になってしまうのです。
ちなみに、私がこの名前の話をして笑わなかったオーストラリア人は今までいません(笑)
それから、私の友人の日本人とオーストラリア人の夫婦が子供の名前を考えていた時に、オーストラリア人の旦那さんが、英語の名前はFrinn(フリン)にしようと提案したら、奥さんが慌てて、「それだと日本語では『不倫』と同じになる。日本の学校に行ったりしたら名前のせいでいじめられてしまうかもしれない」と止めたことがあるらしいです。
また、アイという名前は昔からよくある名前ですね。
英語だと「私」の意味の”I”になってしまうので、英語で話しているととても変な感じになります。
実際、私の友人にアイさんがいましたが、彼女の話をしている時に例えば、”I went to the park yesterday”と言ったら、「私」が公園に行ったのか、「アイさん」が行ったのか一瞬分からなくなります。
まあ、文脈で判別できることが多くありますが、状況によってはちゃんと説明しないとならないこともあります。
同じ理由で、マイという名前もMyと同じなので話し辛くなりそうです。
日本にいる人にも関係があるかも?
いろいろな例を挙げてきましたが、これ以外にも気をつけるべき点はきっと他にもあると思います。
私たちはいくつかの名前の候補のリストを作って、オーストラリア人の友達におかしな意味に捉えられたり、言いにくいものがないか聞いて候補を絞りました。
日本語で一般的で、しかも英語を話す人に対しても簡単で、さらに、自分達夫婦が共に気に入る(これは重要です!笑)名前というのはなかなか無いものです。
特に、女の子の名前はまだなんとかなりますが、男の子の名前は良いものがなくて本当に困りますよ。
実際に私のような基準で男の子の名前を考えたことがある人だったら、きっと、「そうそう!」と頷いてくれると思います。
そして、「やっと良い名前があった!」と喜んでお互いの両親に報告したら、「漢字の字画が良くない」だの、「その文字は入れないほうがいい」などと言われたりすると、「それならもうそっちで名前を付けてくれ!」と投げ出したくなるものです。
現在、日本に住んでいて、「海外になど行く予定は無い!」という人にとっては他人事に感じるかもしれません。
でも、子供が将来、海外(英語圏ではないかもしれませんが)に行く可能性もありますし、日本に来た外国人と知り合いになるかもしれません。
特に最近では訪日外国人がとても多くなってきたようなので、自分を外国人に紹介する機会が増えてくるかもしれません。
そう考えると、外国の人に覚えられやすかったり、発音しやすい名前を子供に付けてあげられたら、将来子供に感謝されるかもしれませんよ。
*追記:日本のパスポートの名前の英語表記は現在では必ずしもヘボン式に従わなくても良いようになっているようです。
パスポートの氏名の表音が国際的に最も広く通用する英語を母国語とする人々が発音するときに最も日本語の発音に近い表記であるべきとの観点から、従来よりヘボン式を採用しています。その一方で、近年、氏名、特に名について、国字の音訓及び慣用にとらわれない読み方の名や外来語又は外国風の名を子に付ける例が多くなる等、旅券申請において表記の例外を希望する申請者が増えていることから、その氏名での生活実態がある場合には、非ヘボン式ローマ字表記であっても、その使用を認めることとしました(ただし、パスポートを一度取得された後のローマ字氏名表記の変更については、日本及び渡航先における出入国管理上の問題となり得る懸念があることや、国による旅券管理上の困難さ等から、特に必要と認める場合を除き認められませんのでご注意ください。)。
星に子供の名前を付ける
なんと、自分の好きな名前を星に命名できるサービスがあります。
オーストラリアの天文台が認定してくれて、ギフトの中には証明書と一緒にその天文台の入場チケットまで含まれています。
生まれる子供の名前を星に付けられたらすごく素敵だと思いませんか?
以下の記事を読めばその方法が分かります。
>>星に命名して贈るギフト【スターネーミングギフト】結婚祝い、出産祝い、プロポーズ、母の日、父の日など