ブラック企業の代理人、ブラック教授が唱えるブラック思想に要注意。

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もう相当ニュースになっているのでみなさんご存じだと思いますが、二人目の過労自殺者を出した電通に捜査の手が入りました。

 電通、労基法違反容疑で立件視野 本支社一斉抜き打ち:朝日新聞デジタル

東京労働局と三田労働基準監督署は14日、労働基準法違反の疑いで広告大手、電通の本社(東京都港区)に立ち入り調査に入った。女性新入社員(当時24)が過労自殺し、労災認定されたことを受けた抜き打ちの調査だった。違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いがあるとみて、刑事事件としての立件を視野に調べを進める。

前回の記事の「真面目さは長所?それがあなたを追い詰めるかもしれないワケ」でも指摘しましたが、一人ならず二人の人間を自殺に追いやった罪として徹底的に捜査し、関係した責任者を全て刑事告発して欲しいものです。

私はこの結果を楽しみにしています。

もしこれで責任者達に重い処罰が下されるのならば、もしかしたらほんの少しくらいは日本のブラック企業文化が変化するきっかけくらいにはなるかもしれません。

逆に、もし大企業だからと手加減を加えるようであれば、残念ながら今後もこのようなブラック企業の犠牲者が無くなることはないでしょう。

大学教授のトンデモ発言

さて、これもまた知っている方も多いと思いますが、この事件が話題になっている最中に武蔵野大学の長谷川秀夫教授がとんでもない発言をして炎上した話題もまたネットを賑わせました。

 長谷川秀夫教授、謝罪文を掲載するも、まったく反省してないことが話題に! – クローズアップ言外

武蔵野大学の長谷川秀夫教授が、過労で自殺した電通社員高橋まつりさんの事件に対し、残業時間が100時間を越えたぐらいで自殺するのは情けないと発言し炎上。
「会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」
などと発言したという。

以下がその発言です。

月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない。
会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。
自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。
更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。
それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。
また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。

ツッコミどころ満載の発言ですが、「残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」の下りは散々ネットでも批判されているので、あえて触れないことにします。

今回はそれ以外の箇所について、いかにこの教授の発言がおかしいのかを解説していきたいと思います。

会社はプロの時間を尊重するべき

まずは、「会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。」の部分です。

この長谷川教授は「プロ」という言葉がお好きなようなので私もプロという言葉を借りることにします。

そもそも、亡くなった電通の高橋さんは24歳の新人だったらしいのでまだプロどころではないでしょう。

「会社から給料をもらっているのだからプロだろ」という人もいるかもしれません。

給料をもらっていることを持ってプロと呼ぶのならば、確かに新人でもプロと呼べるかもしれませんが、それならば会社に雇われているプロがやるべき義務としての仕事はあくまでも雇用者と被雇用者との契約通り、定時から定時までの時間であるべきです。

プロは自分の時間を安売りしてはいけません。

会社側にしても、プロの人生の貴重な時間を売ってもらって仕事をしていただいているのだという意識が必要であり、そのプロの時間を尊重するべきです。

プロを無理矢理に長時間働かせたり、ましてやプロの貴重な時間とスキルをタダで使わせてもらおうなどという甘い考えは言語道断なわけです。

サービス残業はプロの時間を盗む窃盗と同じです。

え?無能な人間は定時内に仕事をこなせないから残業も仕方がない?

それはそのプロと契約をした会社側にも責任がありますし、だからと言ってサービス残業をさせる言い訳にはなりません。

何と言っても時間で契約をしているわけですから、その時間を超えて働く義務などプロ側には無いのです。

もし会社側が不満ならばその「プロ」との契約を切ればいいのですのですから、「無能だから」と言うのは違法なサービス残業や超過労働をさせる言い訳にはなりません。

もし、「自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」という長谷川教授の発言が正当化されるのならば、会社側はいくらでもプロに仕事をしてもらえるということになります。

一人の人が一日8時間の勤務時間内に100しかできない仕事量のタスクがあるとして、200の仕事を会社が与えたらプロならば完遂しなければならないのでしょうか?

どう考えてもおかしい話です。

しかし、これこそが日本のブラック企業で起こっている現実です。

会社はプロの時間を尊重し、きちんとした対価を支払い、適正な量の仕事を依頼するべきなのです。

起業した人と会社員を比較する意味はない

次は「自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。」についてです。

長時間労働の話が出ると必ずといって出てくるのがこの種の「起業した人はもっと長時間働いている」「それと比べたら会社員が残業するくらいで文句を言うな」という意見です。

全く、勘違いも甚だしい意見です。

自分で起業した人は自分がやりたい分だけ自分のためにやるわけです。

そこには何の契約もありません。

自分が働きたいだけ自分のビジネスのために働いていて、「おい、それは働き過ぎだから違法だ」などと言う人はいません。

それは個人の勝手ですし、例えそれで過労死したところで特に違法でもないでしょう。

また、失敗すればたくさんのものを失うかもしれませんが、成功すればたくさんのものを得ることが出来ます。

これこそまさに自己責任の世界です。

それに対して会社員は会社と契約をしてそこで決められた時間分だけ働くことの対価として給料を得ているわけです。

つまり、労働者は時間を売り、会社はそれを買っているのです。

会社が儲かろうと損しようと、会社は労働者の時間を買う契約をしているので、契約通りにきちんとその代金を支払う義務があります。

会社がその契約時間以上働かせるのは契約違反ですし、前述したとおり労働をタダでさせるのは窃盗と同じです。

管理者はきちんと仕事をしなさい

次は、「更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。」です。

呆れたことに、この教授は上司の役割も理解できていないようです。

上司は管理者です。

それでは管理者の仕事は何でしょうか?

その名の通り部下の仕事量や質を管理するのが仕事です。

こんなこと誰でも分かっていることです。

部下が残業をしなければ終わらないほどの仕事量があるのならばそれは非常事態であり、それを素早く察知して然るべき処置を施すのが管理者の仕事です。

実際に現場の仕事をしている部下のほうから改善案などのアイディアを出すのはいいでしょう。

しかし、「良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をする」のは管理者の仕事です。

人的資源が足りないことに気付かず、部下を働かせ続け、部下の方から「もっと人員を増やしたほうが成果が上がります」などと言われる管理者は普段一体何をしているのでしょうか?

管理をしない管理者は管理者ではないので、さっさと降格するなりクビにでもしたほうが会社のためです。

残業は自分への投資ではない

さて、「転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき。」というのもまた見当違いも甚だしい意見です。

自分への投資と残業とは全く関係がありません。

「自分への投資と考えろ」とか「将来の自分のために今は頑張れ」などと上司などが言ってきたら要注意です。

そのようなセリフは会社が社員を都合よく酷使し、奴隷化するための方便に過ぎないからです。

自分への投資をしたければ、会社が終わってからでもやれることはいくらでもありますし、そのためには仕事などさっさと切り上げるべきでしょう。

また、世の中には「勉強をして自分へ投資をしたい」と思う人もいれば、「仕事は程々で勤務時間外はゆっくり休みたい」という人もいるわけです。

そのような個人個人の考えの違いなど完全無視で、「自分への投資」を強制する会社は正にブラックでしょう。

断言してもいいですが、このようなセリフを言う会社は社員の「将来」のことなど1ミリ程も考えていません。

そこにあるのは「会社の利益のために倒れるまで働け」という要求だけなのです。

日本が世界から見て異常なことに気付くべき

最後は、「それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。」という発言です。

残業を正当化したり、部下を管理できない管理者がいたり、「自分への投資のために長時間働け」などと言う会社がブラックであることは明白です。

「それでも駄目なら」などと言って会社に無料奉仕などをしている暇があったらさっさと辞めるべきです。

そのような会社にあなたの命をかける価値は全くありません。

今回の長谷川教授の発言に対してネット上で多くの批判が集まったことはせめてもの救いでした。

しかし、このようなブラック企業文化を正当化する思想を持った人間が大学の教授として学生に教鞭をとっているというのは恐ろしい話です。

この長谷川教授だけにとどまらず、日本には未だに長時間労働を礼賛する人間が掃いて捨てるほどいます。

そしてそういう人間たちが間接的に年間3万人の過労自殺者(参照:「汗水たらして一生働くのが当然」の社会が生み出した悲しい現実」)を生み出しているのです。

これを「異常な社会」と呼ばずして何と呼ぶのでしょうか?

きっと、長谷川教授などは「3万人も死ぬとは情けない」とでも言うのでしょうが。

このような考えや働き方に少しでも「おかしい」と感じている人はネットで日本以外の国の人達の働き方や人生の生き方を調べてみることをお勧めします。

日本人の働き方や仕事観は世界から見たら本当に異常であり、労働者側が搾取され、会社側ばかりが美味しい思いをする社会なのです。

「海外に脱出しなさい」とは言いません。

しかし、あなたの現在の会社が「何かおかしい」と感じるのであれば、できるだけ早く辞めてもっとまともな会社を探すべきです。

手遅れになる前に。

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かわずん
アンチ・ブラック企業ブロガー