広告代理店の電通の新入社員だった女性が自殺した事件が過労自殺だったとして労災認定されたというニュースが話題になっています。
「死んでしまいたい」 過労自殺の電通社員、悲痛な叫び:朝日新聞デジタル
業務が大幅に増えたのは、試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降。部署の人数が14人から6人に減ったうえ、担当する企業が増えた。月100時間を超える時間外労働をこなしたこともあり、高橋さんは精神障害による労災認定の基準の一つを超えたと判断された。
電通では、社内の飲み会の準備をする幹事業務も新入社員に担当させており、「接待やプレゼンテーションの企画・立案・実行を実践する重要な訓練の場」と位置づけている。飲み会の後には「反省会」が開かれ、深夜まで先輩社員から細かい指導を受けていた。上司から「君の残業時間は会社にとって無駄」「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などと注意もされていたという。
「本気で死んでしまいたい」「寝たい以外の感情を失った」「こんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」。高橋さんはSNSなどで友人や母親に、仕事のつらさを打ち明けていた。
まさにパワハラ、セクハラのオンパレードです。
自殺するくらいならなぜ会社を辞めないの?
ところで、「自殺するくらいなら何で会社を辞めようとしなかったの?」と思う人は多いと思います。
もちろん、本当のところは本人にしか分からないことですが、私は高橋さんの「真面目さ」が原因の一つではないかと思っています。
日本人は真面目であることは良いことであり長所であると教えられて育ちます。
例えば、「学校は休まない」とか、「上の人(先生や先輩)には逆らわない」とか、「約束には遅刻しない」とか、「真面目に勉強する」とか色々あります。
実際、私も学生の頃は自分を相当真面目であると考えていましたし、それは長所であると思っていました。
誰が仕組んでいるのか知りませんが、日本の教育はそうやって上の人の命令をよく聞き、反抗しない真面目人間を大量に作り出しています。
さらに、日本人はとにかく「逃げることは悪いこと」という観念があります。
このことは私の以前の記事「辛い事から逃げたら負けと言う人が人生の時間を無駄にしている理由」などを含め何度か指摘しています。
そしてこれらのことを忠実に守り続け、「会社を辞めることは逃げること」であり、「辛いことから逃げることは悪いこと」だと信じ、なかなか会社を辞めることができなかったのではないかと思います。
そしてそうこうしている間にも仕事から受けるストレスは増え続け、前にも後ろにも動けなくなってたどり着いたのが自殺という結果だったのではないでしょうか。
正直に言って、自分を死に追いやる真面目さなどクソ食らえです。
高橋さんのお母さんは「労災認定されても娘は戻ってこない。いのちより大切な仕事はありません。過労死を繰り返さないで」と言っています。
しかし、平常心のときには「命より大切な仕事などない」と言う人も、実際にこのような状況になるとこの真面目さが災いして逃げることができないのです。
人員不足による業務の遅延は全て会社の責任
さて、朝日新聞の別の記事では高橋さんが所属していた部署が人員不足であったことが指摘されています。
電通の女性新入社員自殺、労災と認定 残業月105時間:朝日新聞デジタル
電通は先月、インターネット広告業務で不正な取引があり、広告主に代金の過大請求を繰り返していたと発表した。担当部署が恒常的な人手不足に陥っていたと説明し、「現場を理解して人員配置すべきだった」として経営に責任があるとしていた。高橋さんが所属していたのも、ネット広告業務を扱う部署だった。
このことについても私は何度かこれまでの記事で指摘していますが、残業をさせなければ終わらないほどの仕事量がある場合は会社がそれに見合う人員を配置するのが会社の当然の義務であり、それができないのならば損失を覚悟で仕事を減らすべきなのです。
必要人員を揃えられない(あるいは故意に少ない人員しか配置しない)という会社の怠慢を、社員の残業で補うというのは間違っています。
社員は会社のために忠誠心を持って働くという思想が未だに強い日本においては特に、社員は会社の業績が下がるのを防ごうと頑張るでしょう。
しかし、このような理由で業績が下がったとしてもそれは会社の責任であり、実際に業績が下がったところで社員は責められるべきことではありません。
私は現在オーストラリアの現地の会社で働いていますが、このような状況下で、
「仕事は全然終わらないけれど定時になったからみんな帰ろう」
となるのがオーストラリア人。
そして、
「残業をしてでも会社のためになんとか仕事を終わらせよう」
となるのが日本人です。
さらに悪い事に、日本の場合は帰ろうとする人に対して有形無形の同調圧力によって帰らせないということも日常的に起きます。
このような思考や行動も全て教育によって教え込まれてきた「真面目さ」から来ているのです。
責任逃れだけは一流の日本のブラック企業
また同記事には以下のようなことも書かれています。
電通では1991年にも入社2年目の社員(当時24)が自殺。電通は当時、会社としての責任を認めなかったが、00年3月の最高裁判決は「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする責任がある」と認定。過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れをつくった。電通はその後、遺族と和解。責任を認めて再発防止を誓った。
これを見ても分かる通り、日本の会社は命を削って会社のために働いている社員が死ぬと「知らぬ存ぜぬ」を通して責任を回避しようとする血も涙もないクソ企業ばかりです。
そして最終的に逃れられないとなると、イヤイヤ責任を認め、和解し、再発防止を誓ったわけです。
しかし、この時の和解で1億6千万円という賠償金を支払ったにも関わらず、結局何も変わらずまたこのように自殺者を出したのですから、前回の事件から反省もしていなければ改善もしていないのは明らかです。
今回も責任逃れの発言をするつもりなのか知りませんが、普通の精神の持ち主ならば恥ずかしくて言い逃れなど一切できないでしょう。
日本には恥の文化というものがありますが、このようなブラック企業の経営者達にも少しは恥という考えを持ってほしいものです。
そして、日本においては例え間接的にでも人を殺した者は相応の刑事罰を受けるのですから、このような殺人企業の責任者達に対しても同様の刑罰を下すのが妥当でしょう。
このような犯罪企業全てに対して等しく重い処罰を下すようにしない限り、今後も犠牲者は生まれ続けるでしょう。
理想的には、経営陣、パワハラやセクハラをしていた管理者や部署の人間たちも全て刑務所に入れるべきだと思います。
見せしめにこれくらいしないと、もはや日本の文化と言っても過言でないほど染み付いた日本のブラック企業文化はまず変わりません。
大手に就職すれば人生の勝ち組? ー とんでもない!
日本の学生は就職希望先に大手ばかりを希望し、大手に入りさえすれば人生の勝ち組とやらになれると思っているようですがそれは大間違いです。
日本においては電通のような大会社でさえ多分にもれず真っ黒な企業なわけですから、よほど入念に下調べをしないと奴隷のように働かされて捨てられる可能性はいくらでもあるわけです。
今回の事件でさすがに電通に対するイメージは変わって新卒の学生などは電通を避けるようになるでしょうが、日本においてはブラックな大企業などゴロゴロあるので電通を避けたらからと言って全く安心できません。
そもそも今後何年かしたらみんなこのことをすっかり忘れて、また「電通=大企業=良い会社」というイメージが戻り、新卒が入りたいと思うようになる可能性は高いでしょう。
もしあなたが現在、過酷な労働をさせられていて少しでもその現状に疑問を持っているのなら、私の以前の記事「ボロ雑巾のようになって会社に捨てられる前に知っておくべき事とやるべき事」「辛い事から逃げたら負けと言う人が人生の時間を無駄にしている理由」を読んでみてください。
亡くなった高橋さんのお母さんが言うとおり、命より優先される仕事など世の中にはほとんどありません。
ましてや、社員が死んでも言い訳ばかりをして責任逃れをしようとするクソ会社よりも軽い命などありません。
そんな会社はあなたにとっては、あなたの命どころか、ゴミほどの価値も無いのです。
なにはともあれ、会社に殺される前に逃げるのが一番です。
いくらお金があっても命を取られてしまっては何の意味もありません。