日本は過労死が多発する悲しい社会になった?変わるきっかけとなるものは?

電通の社員の過労自殺の事件を受けて、資生堂の魚谷社長が話したことがニュースになりました。

資生堂社長「いつの間に悲しい社会に」 電通過労死憂う:朝日新聞デジタル

彼の発言はどれも正論で、本当は全部紹介したいくらいですが、ここでは一部(それでもかなりの部分ですが)を紹介していきたいと思います。

自分を不幸にする思考はやめよう

 夜12時まで働く日本人の仕事の仕方は異常だ。ほかの人が残っているから帰らないような我慢のし合いはやめないといけない。勤勉でまじめゆえに、資料を一生懸命つくるが、それが無駄につながっていないか。

まさに現在の日本の仕事環境は「我慢のし合い」になっています。

誰かが残っていると他の人も帰れないのであれば、みんなほぼ毎日意味もなく残っていなければならないことになります。

例えばある時にAさんが忙しくて残っていたとします。

こんな時は良くある社会人のマナー的には「周りの人が助けてあげましょう」となるところです。

しかし、どうしても終わらせなければならない急ぎの仕事でもない限りは周りの人はさっさと帰るべきです。

そして、今度は別の日にAさんが仕事が終わり、Bさんが残業しなければならなくなったとしましょう。

こんな時は今度はAさんは気兼ねなく他の人と一緒に家に帰ることができます。

このような習慣にできなければ、当然、全員が残業しない日にしかみんな定時に帰れないことになります。

全員が毎日残業無しで定時に帰る会社が一体日本にどれだけあるでしょうか?

つまり、日本の何千人、何万人という人間が意味もなく「付き合い」で残業しているわけです。

実際に誰かを助けているのならばまだマシなほうで、「上司が残っているから」、「周りが残っているから」オフィスに残るなどという、誰も幸せにならないバカバカしい習慣(文化?)には本当に呆れるばかりです。

これは二度とない人生の貴重な時間の浪費です。

また、魚谷社長が言っているとおり、日本人はとにかく真面目な人が多いのが特徴です。

このことは以前の私の記事(真面目さは長所?それがあなたを追い詰めるかもしれないワケ)でも指摘しました。

これは育った環境、文化、教育が多分に影響しています。

「休まない事は偉い」とか、「連帯責任」とか、「帰る前に一言『何か手伝えることはありませんか?』と確認してから帰る」などなど。

私は必ずしも全てにおいて、「真面目なことが悪くて不真面目なことが良い」とは思いません。

しかし、その真面目過ぎる国民性は、会社や経営者にとって非常に都合の良いものです。

無理な命令にも文句を言わず従う「真面目」な社員を日本で探すのには苦労しません。

しかも無茶な命令に黙って従ってくれるだけではありません。

病気になったり過労死するまで会社のために働いてくれます。

そして(お金の問題ではありませんが)、亡くなった多くの人たちは彼らの命に値する程の給料を貰っていたわけでもありません。

さらには、多くの人が社畜となり、有給休暇を取ろうとしたり、定時で帰ろうとしたりする同僚を厳しく監視し、圧力をかけることまでしてくれます。

こういう人達はみんな、

「自分が大変なのに他の人が帰ったり楽なのは許せない」

「自分が苦労しているのだから他の人も苦しむべき」

という、とんでもなくネガティブな思考に取り憑かれていて、「みんなで一緒に不幸になること」が最高の幸せになっています。

つまり、安い給料で死ぬほど働き、会社に都合が悪い社員のしつけまでしてくれるわけです。

全く惨めな人達です。

これほど経営者にとって都合のいい人間がいる国など他にあまりないでしょう。

自分や家族が幸せでなければならない理由

 僕がいつも言うのは、早く帰って、勉強会にいったり、友達に会ったり、家族と過ごしたりした方が会社の業績にも結果的につながるということだ。なぜなら、その方が人はクリエーティブになり、いいアイデアが生まれ、集中して仕事に取り組めるからだ。

家族や自分自身の時間をきちんと確保するというのは非常に重要なことです。

つい最近辞任を表明したニュージーランドの首相のニュースを見てみてください。

ニュージーランド首相辞意「妻子との時間、要因の一つ」:朝日新聞デジタル

 キー氏はこの日の会見で、妻子と過ごす時間を増やしたいことが理由の一つとしながらも、「たくさんある要因の一つだ」と述べた。さらに、「何年もの間、自分と似たような環境で(辞任の)一歩を踏み出せない指導者たちを多く見てきた。理由はわかる。辞めがたい仕事だからだ」とも話し、引き際を考えていたことをうかがわせた。

ちなみに、オーストラリアの首相はキー首相の辞任を惜しみながらも彼の「家族のために」という決断を賞賛しています。

一国の首相がこのような理由で辞任するということから見ても、海外ではいかに家庭を大事にしているか分かると思います。

これはきっと国民の理解を得られるからこそできることでしょう。

家庭よりも仕事が優先の日本ではこんなことはあり得ないでしょう。

もし同じように日本の首相が今「首相の仕事は忙しすぎて家族との時間が取れないから首相を辞めます」と言ったらどう言われるでしょうか?

「一国のトップがそんなことで辞めるなど仕事を舐めてる

甘えるな

等々、間違いなくものすごい批判を浴びることになると思います。

社員が精神的にも身体的にも健康でいるということは、それだけ仕事で良い仕事をしてくれる可能性が高くなるということです。

私が現在働いているオーストラリアの会社では「自分や家族が幸せでないのに、仕事で他の人を幸せにできるはずがない。だから自分や家族を一番に考えなさい」と何度も言われました。

疲れ切って不幸せな社員ばかりの会社が良い結果を出せるとは到底思えません。

さらに、そのような状況で社員が過労死でもしてネガティブなイメージが付こうものなら、会社にとって存続の危機にさえなりえます。

ごく近い目先の利益でしか判断ができないブラック企業の経営者には理解できないことかもしれませんが。

積極的に日本の外を見て欲しい

 働き方改革で大切なのは、日本の長時間労働の背景にある強すぎるヒエラルキーを変えることだ。そのためには、人材の多様性が鍵になる。例えば、ドイツやフランスの人は、金曜日の午後は会社にいなかったり、2~3週間休みをとったりする。一緒に働けば、僕らの常識が彼らの非常識だと自然に気づかされる。

これは私がこのブログで頻繁に言っていることでもあります。

日本で当たり前だと思われている事が世界でも同じようなものだろうと思っていることはたくさんあります。

あるいは日本の外のことなど考えたこともない人もたくさんいるでしょう。

しかし、一度日本から出てみると、実は日本での常識が「全く常識ではなかった」ということが多くあることに気付くでしょう。

これは逆に言うと、外に出なければそのことに気付かないということです。

これが、現在の日本の社会が抱えている様々な問題が何時まで経っても変わらない根本的な原因の一つであると私は考えています。

もしあなたが海外に出てその国の仕事環境を目の当たりすればいかに日本が異常かに気付くでしょう。

今ではネットでたくさんの情報を得ることができますが、やはり「百聞は一見にしかず」で、実際に見て体験することはとても大きな意味を持ちます。

ただ知識として知っているだけという事は行動に結びつかないことが結構あるものです。

例えばここで私がいくらオーストラリアと日本を比較した話をしても「へー、そうなんだ」で終わってしまうかもしれません。

しかし、実際に行って自分で体験したものは事あるごとに記憶として蘇ってくるものです。

そしてそれが実際の行動に影響してくるようになります。

そういう意味で、私はより多くの日本人が積極的に海外に出て色々な経験をして欲しいと思っています。

これは決して、「私のように海外に移住したほうが良いですよ」と言いたいわけではありません。

もちろん海外に移住したいと思う人はそれはそれで良いことです。

しかし、むしろ私は日本の外を見て日本に帰った人達が現在の日本の労働環境や社会問題を変える原動力となって欲しいと思っています。

一人でも多くの日本人が海外を体験して「今の日本はおかしい」「日本の仕事環境などの常識は海外では異常だ」ということに気付いて日本に戻って、また他の人にそのことを伝えてほしいと思います。

もちろん、外から見ることで逆に日本の良い面が見えてくることもたくさんあるでしょう。

このように日本の外から日本の良い面も悪い面も気付いた人が増えてくれば、ブラック企業に代表されるような日本人を苦しめている現在の社会習慣や労働環境が改善されていくきっかけになっていくのではないでしょうか。

ABOUT ME
かわずん
アンチ・ブラック企業ブロガー