子供に人気の職業「3位 ユーチューバー」が物語る現実

今の子供達が将来なりたいと思う人気の職種で「ユーチューバー」が上位に入ったようです。

くらしナビ・学ぶ:スマホっ子の風景 竹内先生の新教育論 「夢はユーチューバー」勉強しない子どもたち – 毎日新聞

小学四年生へのアンケートでなりたい職業を聞いたところ、一位サッカー選手、二位医者と来て三位がユーチューバーだったそうです。

いつの時代でも、その時に流行っている格好いい職業や人気の選手がいるスポーツ、或いはたくさんお金が稼げる職業が上位に来るものです。

サッカー選手は「格好いいから」と「お金がたくさん稼げそう」からでしょうし、医者も「お金を沢山稼げそう」というイメージからランキング上位の常連です。

それにしてもユーチューバーが三位に来るとは・・・

お年寄りなど、Youtubeを知らない人にとっては「え?何する仕事なの?」といった感じではないかと思います。

最初はこのニュースを見て「ついにこんな時代になったか」と驚きました。

でもよく考えてみるとそれほど驚くべきことでもなく、「結構当然な結果かも」と思うようになりました。

ユーチューバーで稼ぐのは大変。でも子供には関係ない

冒頭の毎日新聞の記事の筆者の意見では子供たちがユーチューバーに憧れている理由として以下のように書いています。

 大変な時代だと考えていると、「10〜20年で約半分の仕事がコンピューターにとってかわられる」というオックスフォード大学教授の研究をネットで見かけました。原典にあたっていないので真偽はさておき、確かに仕事は変わってきています。すでに改札係の駅員は自動改札機、ベルトコンベヤーの大量生産はほぼ機械だけ。近い将来、ホテルの受付、レジ係は不要になり、自動運転が可能になるとタクシーやトラックの運転手などの仕事はなくなるかもしれません。子どもに求められる力は確実に変化しています。

そういう視点で小4の将来の夢を見直してみると、上位はコンピューターに取って代わられる可能性の少ないものばかりです。そのあたりを子どもたちが敏感に感じ取って、ユーチューバーを目指しているとしたら、笑っている場合ではなくなってきました。

つまり、「これからはコンピューターの時代だからユーチューバーだ」と子供が敏感に察知した結果がこの順位に現れたという考えのようです。

しかしそれだけが理由ならば例えばコンピュータのハードウェアやソフトウエアのエンジニアが上位に来てもいいのではないでしょうか?

でも実際にはそうではありません。

子供たちがユーチューバーに惹かれるのにはもっと違う理由があるはずです。

まずユーチューバーの場合、視聴者(特に子供)から見ると自分が好きなことをやって動画としてアップするだけで稼げるので「楽して稼げそう」というイメージがあるのでしょう。

今現在日本人ユーチューバーのトップの人は年に1億円程度稼いでいると聞きます。

このような話を聞いてますます「会社などに勤めてコツコツ稼がなくても好きなことをやっているだけでたくさん稼げる」というイメージになったのではないでしょうか。

ちなみに世界ランキングトップの人は年収15億円(!)とも言われています。

言うまでもないことですが、こういう人達は正直にすごいと思います。

しかし当然のことながらこうやって稼げているのは本当に一握りの人だけです。
1億円どころか、生活費が賄えるだけ稼ぐことができている人もごく少数でしょう。

星の数ほどある動画とその製作者の中から有名になって安定したアクセスを集めるようになるまでには相当な時間と労力と運とセンスが必要になります。

Youtubeには現在、毎分100時間分の動画が世界中からアップされ続けているとのことです。

これだけでもとてつもない量ですが、このスピードは年々どんどん早くなってきているということです。

この数字を見るだけでもYoutubeからの収入だけで生活を成り立たせるには相当な競争を勝ち抜かないとならないことは分かると思います。

恐らく最初の数年は大した収入は入ってこないでしょう。
そしてそこまでの時点で殆どの人はその効率の悪さから諦めてしまうでしょう。

コンテンツを作る作業にかかる時間や労力に対して入ってくる収入が少なすぎるので「これならその時間普通に会社で働いたほうがマシ」と考えるようになるのが普通です。

・・・と、大人だったらこのようなことを考えてしまいますが、子供はそんな小難しいことは考えません。

「なんか普通そうな人が面白そうなことや馬鹿なことをしてお金を稼いでいる」

「これで稼げるのなら会社で働かなくていいかも」

こういう単純な考えで子供たちにはユーチューバーが良い職業に見えるのでしょう。

子供がユーチューバーに憧れる本当の理由

私が子供の頃にも学校で「将来は何になりたいですか?」と聞かれたり作文を書かされたりした記憶があります。

男の子は格好いいものに憧れます。

私も多分にもれず、「飛行機のパイロットになりたい」とか「新幹線の運転手になりたい」と言っていたのを覚えています。

たくさんお金が稼げそうだからとかステータスがあるからいう理由だと思いますが、クラスメイトの中には「社長になりたい」と言っている子もいました。

いずれにしても、「楽に稼げそうだから○○になりたい」と考えたことは私はありませんでしたし、その頃の子供はきっとみんな同じだったと思います。

大概の場合、子供は無邪気に「格好いいから」「かわいいから」「楽しそうだから」という理由でなりたい職業を選ぶものです。

ではなぜ今の子供はユーチューバーのような一見楽に稼げそう(現実は違いますが)な仕事に憧れるようになったのでしょうか?

まず一つ目の理由は世間でブラック企業や過労死のことなどが話題となり、子供たちにもそれが耳に入るようになったという理由があるでしょう。

大人になってサラリーマンになったら大変そう

と漠然と感じている子供はたくさんいると思います。

そして二つ目の理由、それはいつも彼らの一番身近にいる大人の姿 ― 彼ら自身の親からの影響です。

ネットやニュースで目にするブラック企業や過労死やうつ病などの話が子供に与える影響は小さくはないでしょう。

しかし子供にとってはニュースよりも何よりも一番身近にいる大人である親の影響が一番大きいはずです。

あなたの子供がもし、「将来はユーチューバーになりたい」と言ったら何と言いますか?

もしかしたらあなたは「ユーチューバーなどくだらない」と答えるかもしれません。

しかしそうやって否定する前によく自分の姿を見てみたほうがいいかもしれません。

子供があなたが働きに行く姿を見て「将来、お父さん(お母さん)みたいな仕事をしたい」と思えるような姿を見せられているのかよく考えてみてください。

  • 毎日残業で疲れきっていませんか?
  • 毎日朝早く出て行って、帰ってくるのは夜が遅くて子供の顔も見られないような生活をしていませんか?
  • 休日は疲れきって昼過ぎまで寝ていて子どもと遊ぶ時間もない一日ではありませんか?
  • 休日も仕事をしていませんか?
  • 転勤ばかりで家族に負担をかけていませんか?
  • 単身赴任で家族が離ればなれになっていませんか?

こんな姿を見ていたら「大きくなったらお父さん(お母さん)のように仕事をしたい」などと思うはずがありません。

つまり、子供が親を見て

会社で働くことは辛いこと

「大人になってもできたら会社に就職して働きたくない

と思っている結果がこのユーチューバー人気なのではないかと思います。

毎晩遅く帰宅して、毎日疲れきっていて、子どもと遊ぶ時間もない、せいぜい子供の寝顔を見るだけの人生を送っている親が日本にはたくさんいます。

私はそのような何のために生きているのかわからないような人生にだけはなりたくないと思い、海外で働くことを決心しました。

そして今、オーストラリアでまさに残業や休日出勤が無く、5時以降はプライベートな時間として楽しめる「人間らしい」生活を送っています。

オーストラリアの家庭では多くの父親や母親が定時に仕事を終わらせ、子供と家で一緒に過ごします。

日本では仕事が第一ですが、オーストラリアでは家庭が第一なのです。

このような環境で育ったオーストラリアやその他の欧米諸国の子供達にも同じ質問をして一体どの程度の子供が「将来はユーチューバーになりたい」と思っているかを是非知りたいものです。

日本の大人たちは子供がユーチューバーになりたいと言うのを聞いて、「楽をしようとするな」とか「くだらないことを言うな」と頭ごなしに否定する人もいると思います。

しかしそのように否定する前になぜ子供がユーチューバーになりたいと思うようになったのか、自分が子供だったとしたら「今と同じように会社で働きたい」と言えるのかよく自分の姿を見て考えたほうが良いでしょう。

今の日本のような社会では「会社に勤めなくてもいいユーチューバーになりたい」と思うのは当然のことでしょう。

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かわずん
アンチ・ブラック企業ブロガー