新卒で会社に入社する前は誰しも多かれ少なかれ期待と不安があるでしょう。
日本の場合はネットやその他のメディアで毎日のようにブラック企業や過労死などについて目にするため、「自分がこれから行く会社がブラックではないか」と不安がかなり大きいと思います。
以下の記事を見ると新社会人の人達がいかにこれからの社会人生活に不安を感じているかが分かります。
「これからの社会人生活が不安」な新入社員は52.4%、過去最高 – ITmedia ビジネスオンライン
これからの社会人生活は不安より期待のほうが大きい」という質問について、「そう思う」と答えたのは47.6%に対し、「そう思わない」は52.4%と調査開始以来(1990年~)、過去最高を記録していることが、日本生産性本部の調査で分かった。
「残業は多いが、自分のキャリアや専門能力を高められる職場」と「残業が少なく、平日でも自分の時間を持て、趣味などに時間が使える職場」のどちらを好 む人が多いのだろうか。「残業が少ない職場を好む」と答えた割合が前年比7.5ポイント増の74.7%と過去最高となった。
現在のようなくだらない面接は止めるべき
面接では「何でもやります」「多少の残業も大丈夫です」などと言うアピールをする人も多いと思いますが、結局はこれが偽らざる気持ちでしょう。
当然のことです。
ほとんどの人は周りが就職活動を始めたから「自分もやらないと」と仕方なく就職先を探し始めます。
そして大体の人は仕事がしたくて就職をするわけではなく、生活費を稼ぐために仕事をするのです。
もしお金がたくさんあっても仕事は続けたいという人はいるでしょう。
でもそのような人達でも「今と同じ仕事をしたい」という人はどのくらいいるでしょうか?
お金があったら今とは別の「本当にやりたい仕事」をするのではないでしょうか?
そういうわけでほとんどの人は仕方がないから今の会社で働いているのです。
そんな人達が残業をしてまで仕事をしたいなどと思うはずがありません。
こんなことは誰でも分かっているはずなのに企業はひたすら「やる気のある人」「根性のある人」を求め続けるので学生も「職を得て生活費を稼いで生きていくため」に嘘をつかざるを得なくなります。
「仕事は生活費を稼ぐためにやるだけです。なのでサービス残業などはやりたくありません」などと正直に言ったら採用してくれる会社などまずないでしょう。
こんな茶番のような面接や採用方式を取るのはもう止めたほうがいいでしょう。
会社側も学生側もお互い時間の無駄です。
人事の担当者や会社も学生の本心など分かっているはずです。
そもそも面接をしている人事の人からして「あなたは心からその仕事をやりたいと思っているか」と聞かれたら一体何人の人が「これは本当に私がやりたい仕事であり、天職です」と答えられるでしょうか?
面接官にしても大方は新卒で入社するまではどこの部署に所属されるかも分からず「なんでもやります」という(嘘の)やる気をアピールして、会社からたまたま割り当てられた人事という仕事をしているに過ぎないのです。
そのくせ学生に対しては同じような気持ちでいることを否定するのはおかしいでしょう?
それとも「俺も嘘をついてきたのだからお前らもそうするべきだ。社会とはそういうものだ」ということですかね?
面接や採用基準で問われるのはその人の能力や大学の成績だけで十分だと思います。
「協調性」やら「ストレス耐性」などというアホな基準を設けるからこのようなことになるのです。
会社は嘘つきばかり
日本の面接や説明会などでは残業に関して質問することさえタブーです。
残業に関して質問するだけで「やる気が無い」などと思われる可能性があるからとその話題に触れることもできないなど本当に異常な社会です。
学生が本音としてそういう質問をしたいと思う大元の原因はサビ残などをさせる違法企業が多すぎることが原因です。
学生はみんなサビ残や過労死などのニュースなどを聞いて「自分が将来入社する会社がブラック企業ではないか」と不安になっています。
そういう学生の不安に対して企業は誠意を持って「残業はありません。あっても必ず給料か代休を出します」と言うべきではないのですか?
それが言えないということは人を騙して安い賃金で働かせようとしていると見なせるということです。
このような質問がタブーであることをいいことに本当のことを黙っているのはもはや違法労働を前提とした採用であって、詐欺と呼んでも差し支えないでしょう。
そもそも残業が発生するというのは異常事態であって、残業をしなければ業務が終わらないという事自体が間違いです。
そういう問題に対して「一日の労働時間8時間。有給休暇は年20日」などと与える気もない(或いは取ることが異常なほど難しい)嘘の条件を言い、残業があるのかどうかという質問はタブーとするなどというクズ企業が日本には多すぎます。
オーストラリアで残業に関する質問がナンセンスな理由
私がオーストラリアの大学を卒業する直前に就職活動のためのワークショップがあり、それに参加したときのことです。
そのワークショップでは面接で想定される質問や、履歴書の書き方など色々と教えてくれます。
そこで私は「面接の時に残業があるのか聞いても大丈夫ですか?」と質問しました。
そのワークショップの担当者は「なんでそんな質問をするのかわけがわからない」という顔をして一瞬考え込んでいました。
もう随分と昔の話なので、細かい受け答えは忘れてしまいましたが、その担当者の人の答えは「なぜ会社にわざわざそんなことを聞く必要があるの?聞く必要は無いでしょう」というような感じでした。
一瞬、「ん?これは日本と同じようにやはりこの手の質問はタブーなのかな?」と思ったのですが、理由は全く違いました。
今ならそんな担当者のリアクションや回答の意味がとても分かります。
なぜならオーストラリアの会社では残業をすることなどまず無いからです。
オーストラリアでは残業というのはどうしても終わらせなければならない仕事がある場合や緊急の場合に行うものであり、非常事態のとき以外はあり得ません。
多くの日本の会社では残業があるのが「普通」で、会社の中には一定時間の残業時間を基本給に含めている「みなし残業」なるトンデモ制度を取り入れているところまであります。
そしてそんな会社はみなし残業ような決まりがあることは募集時には隠しておくので給料をもらってから残業代が少ないことに気付いたという話はよく聞きます。
こんな会社ばかりの日本において、「キャリア形成」などより「残業ができるだけ少なくてプライベートな時間を持てる」ほうが良いと考える学生の気持ちは痛いほど理解できます。
キャリア形成をする前に過労死してしまってはどうしようもありませんからね。
全てのブラック企業に制裁を。全ての新卒に安心を。
冒頭で紹介したITmedia ビジネスオンラインの記事では以下のような調査結果も出ています。
また「仕事を通して発揮した能力をもとにして評価が決まり、同期入社でも昇格に差が付く職場」より、「年齢や経験によって、平均的に昇格していく職場」を望む人の割合は42.3%。この割合も調査開始以来、過去最高となった。
私の以前の記事(島耕作の時代は終わった)でも書いたとおり、最近の若い人たちはバリバリ働いて出世を望むような人達は少なくなり、仕事は程々でいいからプライベートな時間がきちんとあり、程々の生活ができれば良いという人達が増えているのがこの統計からも分かると思います。
このような若い人たちの考えは「会社にこき使われた上に体を壊して使い捨てにされるのは嫌だ」という防御的本能でしょう。
やりたいことを仕事にしているわけではないので当然の考えです。
日本では長らく不景気なままで、終身雇用制度が終わりを告げ、一つの会社が労働者を最後まで面倒を見る時代は終わりました。
そのくせ会社は未だに労働者に忠誠心を求め、過労死するまで仕事を強制させています。
これでは不公平なことこの上ありません。
労働者はもう社員を大切にしない会社に忠誠心を誓う必要はありません。
違法な超過労働をさせたりパワハラやセクハラを始めとする様々なハラスメントをしてきたりしたら健康を害したり命を奪われる前に堂々と声を上げて会社と争うべきです。
幸い今は気軽に相談できる弁護士や一人でも入れる組合などネットで探せばすぐに見つけることができるようになりました。
日本人の労働者は今まで大人し過ぎました。
労働者が大人しくて言いたいことも言えず一見従順なことをいいことにブラック企業の経営者のようなクズ人間がのさばり労働者をいいように使ってきました。
企業を積極的に監視せず結果的に違法行為を放置している国や労働基準局などにももちろん責任はあります。
今は就活中の学生もネットなどを使って自分が候補としている会社がブラック企業と噂されていないか事前に調べる時代になりました。
またネット上でブラック企業に認定された会社はその業績に悪影響が出るようになり、これらのネット上の声を企業も無視できなくなってきました。
これは非常に良い流れだと思います。
労働者が団結して企業と対決するのが本来のあるべき姿です。
今までの日本ではそれが少なすぎました。
これからは社員を搾取する全てのブラック企業に社会的制裁が下されて違法企業が淘汰され、全ての新卒の人たちが不安なく会社に行ける社会になっていくべきです。