まず、いきなり記事とは関係のないことで恐縮ですが、このブログも今回の記事でちょうど100記事目になりました。
まだまだ小さい、取るに足らないサイトですが、読者の方には大感謝です。
時々、応援のメッセージを送ってくれる方もいて、とても励みになっています。
今後も興味を持ってもらえる記事を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
新卒は自己防衛のための情報収集が必須の時代
さて、今回は「『休めないなら辞めます』イマドキ20代が余暇を優先する理由」という、色々とツッコミどころがある内容の記事があったので、そこから引用させてもらいつつ進めていきたいと思います。
まずはその記事から。
「休めないなら辞めます」イマドキ20代が余暇を優先する理由 (1/5) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
頼むから、出ないでくれ──。
都内の大学に通う、就職活動真っただ中の男子大学生、横山正さん(仮名・21歳)。ここ数日、夜11時以降は、一人暮らしのアパートの部屋から“志望企業”に電話をかけるのが日課になっている。汗ばむ手でスマホを握りしめ、祈るように番号を押す。だがワンコール鳴ったところで、願いは砕け散る。
「はい、○○(会社名)でございます」
相手の声を聞き、急いで電話を切った。
「ここも、ウソつきか……」
手帳に書いた志望リストの中から、電話に出た企業名にチェックを入れる。優先順位が落ちたことを示す印だ。日曜日に電話して電話に出た企業にも、同様のチェックをつけた。明日は友達と飲みに行った後、深夜に志望企業の電気が消えているかどうか直接見に行くつもり。こうして、入社後に残業を強いられないか、週末は本当に休めるのか、企業の実態を確かめているのだ。
そこまでする理由は、企業が採用募集時に公表する平均残業時間や有休消化率を「全く信用できないから」(横山さん)だという。
「現に残業ゼロをうたっているところでも、深夜や日曜日でもワンコールで電話に出る人がいて、背後で働く人がいる様子が伝わってきたこともある。先輩からも“会社が公表する数字なんて、お飾りみたいなものだ、信じるな”って言われてきました。いわば選考に進む前の“自己防衛”みたいなものです」
無言電話をかけるという手段はあまり賛成できませんが(せめて「すみません。間違えました」くらいは言うべきでしょう) 、こういうことをしたくなる気持ちは良くわかります。
シフト制で夜に従業員がいる会社もあるかもしれないので必ずしも、「夜に電話に出た=ブラック」ということにはならないと思いますが、こうやって積極的に情報を集めようとする姿勢は評価できます。
なにしろ、日本は労働者から搾取して利益を上げようと考えるブラック企業が本当に多いですからね。
そういう企業に就職してしまって人生を棒に振ったり、最悪、命まで取られる危険性を考えると、就活する人達も必死に情報を集める必要があるでしょう。
こうやって自己防衛意識が高まりブラック企業を見極めようとする学生が増えれば、社員を奴隷のように扱って死なせてしまっても大した反省もしない極悪犯罪企業が徐々に淘汰されていく可能性もあるのではないかと淡い期待をしています。
会社は自分たちが諸悪の根源であるなどと全く考えていない
学生優位の売り手市場が続く中、人材集めに奔走する採用担当者は、どう感じているのか。就活フェアの出展企業で、採用担当歴6年という男性社員(44)は、今年の学生は特に「どれだけ休めるか」を面と向かって聞く傾向が強いと話す。
「少し前までは、就活の場で志望企業相手にそんなことを聞くなんて考えられなかったことですが、全く悪びれずに尋ねる様子を目の当たりにすると、それだけ時代が変わったということでしょうか。売り手市場の今、優秀な人材を確保するためには“これだけ休める”アピールをせざるを得ない状況。企業としては、どれだけ休めるかだけで勝負しても仕方がないのではと思うのですが……」
そもそも、日本の多くの企業が今まで散々違法なサービス残業をさせたり、労働者の正当な権利である有給を満足に取らせなかった事などが根本的な問題であるわけです。
それにも関わらず、「売り手市場だから学生は図々しく休暇のことなど聞いてくる」と言うような論調であるところからして、日本の会社がロクでもないところばかりだということを表しています。
もし日本の会社が、平日は定時で仕事が終わり、嘘偽りのない完全週休二日であり、有給を完全消化できるようなところばかりであったならば、売り手市場だろうと買い手市場だろうと、「どれだけ休めるか」などということをアピールする必要などそもそも無かったはずです。
その証拠に私が働いているオーストラリアでは、「うちの会社はこんなに休みが取れますよ」などとアピールしている会社は見たことがありません。
これはオーストラリアではきちんと有給を含めた休みを取得することが出来るのが当然なので誰もそんなことを心配しないし聞きもしないからです。
「企業としては、どれだけ休めるかだけで勝負しても仕方がないのではと思うのですが……」などと言うのは、「いかに日本にクソな会社が多いか」という根本的な原因をまるで「他人事」のように捉えた発言であり、お話になりません。
この採用担当者には、「まずは労働者の権利を守り、まともな労働環境が提供されるような社会にしてから出直してこい」と言いたいですね。
「経営者目線」の労働者が蔓延る日本の異常さ
今でも忘れられないのが、申請を受け取ったときの上司の表情だ。あぜんとした後、上司は苦笑いをしながら「有給休暇は、1年目から取るものじゃない」と申請を突き返した。桜木さんは心の中で思わずこう叫んだ。
「え? だって入社したときには、“休みはしっかり取れ”って言ったじゃん!」
周囲に迷惑をかけないよう、休みの前には猛スピードで仕事を進めようと張り切っていたのに。休みが取りやすいという環境も入社の大きな動機だったのに──。反発心に火が付き、収まらず、こう言い放った。
「せっかく与えられた初めての有給休暇なのに、休みたいときに休めないんなら、辞めます」
その瞬間、上司の苦笑いは消え、表情がこわばった。「取得OK」と申請が通ったのは、その翌日のことだった。桜木さんは言う。
「それから2回、残りの有給休暇を取得して、台湾と韓国にも行きました。2回目からは、上司も半ば諦めモードで認めてくれるようになった。上司からすれば、私はたぶん、異次元の人種。私は取れる休みはしっかり取って、旅行もしたいし勉強もしたい。やりたいことがいっぱいあるんです。今年ももちろん、有給休暇は全て使う予定です」
“異次元の人種”と接する中間管理職からは、戸惑いの声が相次いでいる。あるサービス業の男性(51)は、こう嘆く。
「今の新入社員は、まだ仕事も覚えていない半人前なのに、自己主張だけは一人前。ですが、時代が時代なだけに、休みたいという声を真っ向から否定することもできない。どうやって歩み寄ればいいのか」
私の以前の記事の、「『権利を主張する前に義務を果たすべき』という信仰があなたを不幸にする理由」でも書きましたが、仕事がきちんとできるようになってから(義務)、有給(権利)を要求しろなどと言う人間がなんと多いことか。
「一人前になるまで休暇は取ってはならない」などというルールはどこの法律や労使契約に書かれているのでしょうか?
大体、「彼は一人前」だの「あの人はまだ半人前」だの、そんな曖昧なことを判断するのが会社だとしたら有給なんて一回も取れなくなってもおかしくありませんね。
そうそう、「有給をいつから取れるのか」という話で思い出したことがあります。
ちょうど良い機会なのでここで書いておきます。
私が上記の、「『権利を主張する前に義務を果たすべき』という信仰があなたを不幸にする理由」の記事内で、「極端な話、有給を入社1週目に取っても問題ないはずです」ということを書いたのですが、それに対して、「有給を入社1週目に取っても問題ないなんて、とんでもない。有給休暇は勤続6ヶ月で10日発生すると法律で決まっていて、それまでに休むと欠勤になってしまいます。現在の日本の法律では義務が先です」と反論している人を見ました。
イエイエ、ほとんど間違っていますから。
この方が指摘している法律は「労働基準法 第39条第2項」です。
使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。
もう、分かりますよね?
この法律は、「6ヶ月以上働いた人に対しては最低これだけの有給をあげないとなりません」と会社に要求しているのであって、「6ヶ月未満で有給を取らせると違法です」などとは一言も言っていません。
ましてやこの法律は、「法律では義務が先です」などという話など一切していません。
もし勤続6ヶ月未満の労働者が有給を要求してきたら会社としては拒否することが出来るので、会社が拒否しているにも関わらず、それでも休んだ場合はこの方の言うとおり欠勤になる可能性があるということです。
会社の判断で勤続6ヶ月より前に社員に有給を与えても違法にはならないということです。
入社してすぐの社員に有給を与えたからといって逮捕された経営者の話など聞いたことがありませんよね(笑)
「法律で決まっているのだから、入社1週目で有給なんてとんでもない」と言う人は、サービス残業をさせたりして社員を奴隷のように扱ったり、過労死という、実質的な企業による殺人を犯しているようなブラック企業こそ批判するべきではないのですか?
こっちのほうが余程悪質で、しかも明らかに違法です。
日本においては、「まだ仕事もできないくせに」とか、「一人前になってから有給を取れ」とか、「自分の給料分も会社に利益をもたらしていなくせに」などといった契約書にも書いてないような屁理屈かつ曖昧な判断基準を以てして、社員に対する義務を果たしたがらない会社が多く存在します。
有給の権利を得た労働者がそれを行使しようとした場合は会社側は特殊な理由(季節変更権)がない限りは拒否できないということは法律で決まっています。
そういう会社は違法なのに、そういうところには声を上げて抗議しないのでしょうか?
日本の異常なところは、会社や経営者だけでなく、使われる側である労働者までもがなぜか自然と「経営者目線」で、「労働者側は権利の前に義務を果たさないとならない」などと、労働者側に厳しいことです。
いずれにしても、社員が有給をもらえる条件を満たしているのであれば、「つべこべ言ってないで、決められた権利を与えろ」と私は言いたいわけです。
今の若者を指して、「異次元の人種」などと記事の筆者は書いていますが、日本の外から見たらこういう悪しき日本の風潮に未だに取り憑かれている日本人達こそ異次元の人種であり、非常識極まりない人たちだと言えるでしょう。
「自主残業」と言う名の強制労働
中には「時代のせいで、むしろかわいそう」と若手を哀れむ意見も聞かれる。
「昔も今も、基幹社員として一人前になるには、首までどっぷり仕事につかる期間が必要なはず。今でいう“サービス残業”も、昔は自主的な“学びの時間”で、それが会社にも認められていた。でも今は、会社にいる時間は勤務時間として申告し、終わったらとっとと帰れ、だらだら仕事をするなということになっている。全てがコスト管理の感覚で、非生産的な時間が認められづらい。若手が勉強しようと思ってもしづらい時代だなと思います」(金融・53歳)
かわいそうって・・・(笑)
勉強をしたいのであれば自分の家でいくらでもできるし、それは今でも自由にやれば良いでしょう。
しかし、「自主的な学びの時間」「自主的な仕事」という建前で今までどれだけのブラック企業が社員に「自由意志ではないサービス残業」を強いてきたのでしょうか?
「若い時の苦労は買ってでもしろ」などと言うような老害が吐くような言葉を自分たちの都合のいいように会社が使い、どれだけの若者を違法に酷使してきたのでしょうか?
もしこれらのような、会社による強制的な「持ち帰り残業」が今まで無かったのであれば、家での「自由な勉強の時間」など問題にもなっていなかったでしょう。
実際、私のオーストラリアの会社でも多くの同僚が自宅で自主的に勉強をしていたりします。
でもそれは本当に自主的なものであり、決して「勤務時間中に仕事が終わらないから」などと言って持ち帰っている類のものではないのです。
会社の意味不明な「上から目線」
そして、もう一つ。若手社員の「休みたい」には、寛容な心で向き合い、理由を聞いて対応すること。
「頭ごなしに否定するのでは伝わらない。相手を尊重し、お互いの考えをきちんと話し合う以外にありません」
「寛容な心で向き合い、理由を聞いて対応すること」って・・・ほんと、厚顔無恥もいいところです。
何度も書いているように、休みを取るのは法律で定められた社員の正当な権利なわけです。
その権利を行使することに対して、「寛容な心」も「話し合い」もヘッタクレもないでしょう。
社員が、「休みを取ります」と言ってきたら法律上はほとんど会社に拒否する権限などないわけで、もしどうしてもその時は休暇を取らず働いてほしいのであれば会社は社員に頭を下げてお願いする立場なわけです。
ましてや、「頭ごなしに否定」など勘違いも甚だしい。
もし何が何でも社員に休みを取らせる気が無いないのであれば、契約時の勤務条件に、「年次有給休暇ゼロ」「サービス残業あり」とでも書いておくべきでしょう。
まあ、その場合は当然、労働基準法に違反するのでいずれにしても話にならないわけですが。
採用するときだけはまともなことを書いておいて、「採用してしまったらこっちのもの」とばかりに休暇を取らせないというのは大嘘つきもいいところです。
会社が従業員との契約を守らないという事が問題であるのに、「相手を尊重し、きちんと話し合う」などという上から目線であるのが全く理解不能です。
相手を尊重するのはいいですが、まずは会社側が法律と従業員との契約を尊重するのが理というものでしょう。
日本の会社は自分たちが違法行為をしたり従業員との契約を守っていないにも関わらず、そのことをすっかり棚に上げて、経営者から管理者に至るまで上から目線なのです。
そして奇妙なことに、雇用者に対して団結してより良い労働条件を引き出していくべき労働者達自身は多かれ少なかれ社畜思想、経営者目線であり、お互いに足を引っ張り合っています。
これらのこと全てが海外から見た日本の社会を異常たらしめているものなのです。