私が現在働いている会社はオーストラリアでは2社目の会社になります。
最初の会社は5年間働いた後リストラされ、現在の会社は働き始めて7年目になります。
今回は私がこの2つのオーストラリアの会社にどのように採用されたのか、また、就職活動がどのようなものだったかを紹介したいと思います。
やはりコネが一番楽
まずは私の最初のオーストラリアの会社との出会いと、そこで正社員になるまでの話です。
私は日本で大学を卒業して学士を持っているのですが、オーストラリアに来た時はまずは現地の大学に入り、自分の専門であるコンピュータサイエンスの修士のコースを取りました。
このコースは最短で2年なのですが、最後の学期が始まった頃にクラスメイトが「大学が運営しているバイト募集サイトで日本語が使えてソフトウェアの知識がある人を募集している会社があったよ」と教えてくれました。
調べてみると、それはその会社が開発しているソフトを日本語化する仕事でした。
大学に入学してから1年半の期間はなんとか単位を取るのに必死だったのでバイトをする余裕など全く無かったのですが、この最後の学期は奇跡的に少し余裕があり、週に数日程度であれば時間が作れそうでした。
大学卒業後は現地の会社でソフトウェア開発者として働きたいと思っていた私は「職種は少し違うけれど今後の経験としていいかも」という軽い気持ちで応募してみました。
そして・・・面接に行ったその場で採用されました。(笑)
私が優秀だったから・・・と言いたいところですが、実際のところは条件に合う人で応募してきたのが私だけだったというのが理由でしょう。
そして、その会社でソフトを日本語化する仕事を任され、卒業までの半年間その会社でバイトしました。
仕事をもらったとは言え、翻訳作業の仕事は私にとってはとても退屈だったので上司には時々、「私は○○のスキルを持っているのでソフトウェア開発もできるよ。何か手伝えることがあったらいつでも言って。」というようなことを伝えていました。
そのためか、少しですが開発関連の簡単な仕事をくれるようになりました。
それまで翻訳の仕事ばかりだったので、簡単なものであっても開発の仕事を任せてくれた時はとても嬉しかったのを覚えています。
なにしろ、オーストラリアに来てから初めての「給料が出る開発の仕事」でしたから。
そしてそれから半年後に大学を無事卒業し、オーストラリアの永住権を取得して就活を始めました。
履歴書などを作って準備し始めて数社応募しましたが、なにしろオーストラリアで初めての就職活動だったので右も左も分からない状態で仕事が決まるまで先は長そうな感じがしました。
活動を始めてから一件だけ、電話でコンタクトをくれた会社があったのですが、人生で初めての英語での電話面接で緊張してしまい、言いたいことの1割も言えず見事に撃沈していました。
そうして暫くした時にバイト先の会社の上司に、「就職活動の調子はどう?」と聞かれました。
正直に「うーん、今のところ良いニュースはないね」と答えたところ、「開発の部署で一つポジションが用意できるから良かったらそっちでフルタイムで働かないか?」と言われました。
私はその会社ではソフトウェアの開発要員は募集していないと「なんとなく」思い込んでいたので、そんなオファーをもらうとは夢にも思ってもいませんでした。
今後の就職活動での電話面接やら、実際の面接やらのことを考えてウンザリしていましたし、バイトで働いていたその会社は結構気に入っていたので渡りに船とばかりにその場でオーケーしました。
それ以上就職活動しなくて良くなったというのもありますが、それまでの働きを認めてくれて、しかもそれまでのソフトの日本語化の仕事ではなく、私が希望していたソフトウェア開発のポジションをオファーしてくれたということは素直に嬉しかったです。
リストラ、そして就職活動へ
できたら就職活動は二度としたくないと思っていたので、特に不満がない限りはずっとその会社で働き続けるつもりでした。
しかしそれから5年ほど働いたあたりで会社の業績が悪くなり始め、同僚が次々とリストラされていきました。
そして何回目かの大規模リストラの後、ついに私が所属していたチームごと無くなることになってしまいました。
実はその前の週に、直属の上司から「うちのチームは大丈夫だろう」ということを言われていたので、まさか自分がクビになるとは思ってもいませんでした。
その日はリストラ対象になった人が一人一人会議室に呼ばれてIT部門のマネージャーに解雇を言い渡されていました。
誰が解雇リストに載っているかは会社の上の人達だけが知っていて社員たちには知らされないので、実際に呼ばれるまでは誰がクビになるか分かりません。
私は「自分は大丈夫だろう」と思い込んでいたので、その日も普段と同じように仕事をしていたのですが、いきなりマネージャーに会議室に来るように言われました。
青天の霹靂とはまさにこのことです。
あの時の何とも言えない気持ちは今思い出しても本当に嫌なものですし、できるものならば今後の人生で二度と味わいたくないものです。
呼ばれて行った会議室には人事部のマネージャーも居ました。
そして彼らから解雇のことを伝えられ、「このリストラはあくまでも会社の経営状態の悪化からくる問題であって、あなたの能力に問題があったわけではない」ということや、解雇の特別パッケージで退職金がプラスされること、その他色々な事務的な事を30分位で伝えられました。
そしてその後、数時間以内に私物をまとめて退社するように言われました。
そんなに短時間で退社させられるのは、恐らくパソコンのデータなどの漏洩を防いだり他にも色々とセキュリティー的な理由があるのだと思います。
アメリカの映画やドラマで、クビになった人がダンボール箱に私物を入れて会社から去る場面を見たことがある人も多いと思います。
まさにそれをしました。
ドラマや映画の中の世界のことだと思っていたことを自分がやる羽目になるとは思ってもいませんでした。
その日はいつもと変わらない朝で、普通に出社して、普通に仕事をして、普通に帰るという当たり前の日常になると思い込んでいたのに、いきなりどん底に突き落とされた気分でした。
また就職活動をしなければならないとか、今後のことを考えるとものすごく落ち込むのと同時にいつ次の仕事が決まるのかととても不安になりました。
働きたくない会社
最初の会社にはほんとんど就活せずに採用されたので、これが私にとっての最初の本格的な就職活動となりました。
一番良いのはコネがあることですが、残念ながら私には使えそうなコネは全くありませんでした。
会社を選ぶにあたって私が一つ拘ったところは、「日本語を使う仕事はしたくない」「現地にある日本の会社では働きたくない」というものでした。
日本語ができる人間を必要としている会社は当然ながら日本人や日本の会社と関わりがあるか、将来的に関わる予定があるところです。
私がリストラされた前の会社には他に日本人の従業員はいませんでしたが、日本への進出を狙っていました。
私は営業の部署から日本の会社と打ち合わせなどをする時に度々サポートを頼まれましたが、日本の会社や日本人と仕事をしていると様々な面で本当に疲れました。
元々日本で働くのが嫌でオーストラリアに来たわけですが、オーストラリアにいても日本の会社と関わるとろくな事がないと改めて思い知らされました。
現地の日本企業もいくつかありますが、日本人が働いている会社はオーストラリアにあっても日本の労働環境になっているところがほとんどです。
つまり、残業が多かったり、有給が取りにくかったりという問題があるということです。
日本人はどこまで行っても日本人です。
これでは日本で働くのと変わりがなく、わざわざオーストラリアで働く意味がありません。
しかし日本人であることを生かさないということは、それまで身につけてきた自分の職業スキルだけで他の応募者と渡り合わないとならないということです。
技術力が同じならば英語でのコミュニケーションに問題が無いオーストラリア人や、英語圏から来たその他の国の応募者と競争することになるため、かなり厳しい戦いになるだろうと予測していました。
そして現実は私の予測よりもさらに厳しいものになりました。
まずは就職活動の準備から
まず私はネットで仕事を探し始めることにしました。
オーストラリアの仕事探しのサイトではseek.com.auというところが最大手です。
その他にもいくつかサイトはあるのですが、それらのサイトに登録している会社はseekにも掲載しているところが多かったので、ほぼseekを使っていました。
こちらでは日本のように定形の履歴書というものはないので(お店に行っても売ってません!)、フォーマットや書く内容などは全て自分で決めて書きます。
職務経歴は履歴書の中に書きます。
その他にも、カバーレターというものを書かないとなりません。
これには簡単な自己紹介と、どれだけ自分がそのポジションに適役かということをA4の紙一枚程度にまとめて書きます。
私はとにかく履歴書やカバーレターの書き方をネットで検索しまくり、それらを参考にして自分なりの物を作り上げました。
そして、知り合いなどでチェックしてくれると言う人がいる度に見てもらい、就職活動中にも徐々にブラッシュアップしていきました。
オーストラリアでは履歴書にもカバーレターにも、自分が書きたくない事はわざわざ書く必要はありません。
とにかく自分に有利になるような事や伝えたいことを書けば良いのです。
ここがこちらの履歴書の良い点です。
日本の定形の履歴書では書く事柄が決まってしまっていて、書くことが無かったり書きたくなくても空白で提出するわけにはいきませんから。
そしてこれは日本でも同じことですが、会社の採用担当者や人材紹介会社は何百通という応募から数人の候補者を時間をかけずに選び出す(恐らく一通につき30秒~1分程度と言ったところではないでしょうか?)ので、文章が長すぎても短すぎても駄目ですし、とにかくぱっと見たときの印象が全てです。
私は使いませんでしたが、こちらでは履歴書を代行で書いてくれる業者も結構あります。
もちろん彼らもありもしない嘘は書けませんが、「よくこんなに優秀な人物であるかのように書くことができるなー」と感心するくらい立派な履歴書を書いてくれます。
やはり餅は餅屋ですね。
なぜ私がそのような業者に頼まなかったかって?
それは履歴書があまりにも立派だと面接の時に会ったらがっかりされるのではないかという要らぬ心配をしたからです。
私は就活を始めてからも何度も履歴書を手直ししましたが、今思うとやはり最初から業者に頼むべきだったような気がします。
とにかく最初の書類選考に引っかからないと何も始まりませんから。
ところでオーストラリアでは履歴書には生年月日や性別は書きませんし、写真も貼りません。
年齢や性別や容姿や人種で差別することは法律で禁止されているからです。
なので、当然ですが面接でこれらのことを聞かれることもありません。
日本ではときどき、「付き合っている人はいるの?」などというセクハラまがいの質問をするバカ面接官がいるそうですが、こちらでそのような質問をしたら訴えられるレベルです。
ちなみに私は途中から履歴書に写真を貼ることにしました。
応募者自ら写真を貼ることは違法ではありませんし、あるサイトに「写真を貼ることによって、担当者の目にはあなたの履歴書は『その他大勢と同じ紙切れ』ではなく、『一人の人間』として見られるようになる」と書いてあったからです。
実際、写真を貼ってからのほうが問い合わせが多くなった気がします。
ただし私が現在働いている会社ではその会社独自のフォーマットのフォームに書き込んで提出するスタイルだったので写真を貼り付けることはありませんでしたが。
いずれにしても他の人がやらないことをやるのは目立つという意味で良いと思います。
ただ、目立たせようとして履歴書の周りをカラフルに塗ったりする(ネットに出ていましたが、実際にそういう人はいるらしいです)のは逆効果なのでやめましょう。
次回は実際の面接などについて話をしたいと思います。