オーストラリアでは平日以外はお店を開けたがらない
前回の記事(「日本の労働者が会社を信頼してない」のが当然なワケ)の中で、オーストラリアでは週末や祝日の給料を通常よりも多く支払わないとならないという法律があるということを紹介しました。
平日の残業を含めた給料レートの詳細は以下のようになっています。
- 残業をした場合は最初の2時間までは通常の1.5倍
- 2時間以上の残業の場合は通常の2倍
- 土日の給料は平日の1.5倍
- 祝日の給料は平日の2倍
これはフルタイムで働いている正社員に対してだけ適用されるルールではなく、誰にでも適用されるものです。
つまりあなたが平日の時給が1000円のお店でアルバイトをしていた場合、土曜日に働いたら時給1500円もらえることになります。
なので週末や祝日に働いても良いという人は積極的に給料が高い日を狙ってシフトを入れるのです。
逆にお店側からしたらそれだけの人件費を支払うのに見合うだけの利益が出なければわざわざお店を開ける意味が無いので、そういう場合はできるだけ週末はお店を閉めたり、逆に平日の夜で客が見込める場合は遅くまで開けたりして工夫をしています。
例えば普段は夕方5時に閉めているお店でも金曜日の夜はみんな買い物に来るので営業時間を伸ばして9時ころまで開いていたりするところもあります。
金曜日は当然「平日」なので、給料は働かせた時間分だけ平日のレートを払えば良いことになります。
お店を開けている時間が8時間以上になってもシフト制にして人を入れ替えれば残業のレートも回避できます。
そして土曜日は給料のレートが高いので早めにお店を閉めます。
日曜日はそれほど来客が見込めないようであれば全くお店を開けません。
そういうわけでオーストラリアではほとんどのお店は5時に閉まってしまいます。
ちなみにそんなオーストラリアでも遅くまで開いているお店もあります。
大手のスーパーやセブンイレブン、それからマクドナルドなどのバーガーショップ、あと考え付くのは一部の薬局などでしょうか。
あ、もちろんパブも夜遅くまでやってます。
話が逸れますが、こちらのセブンイレブンは日本と違って全然「コンビニエンス」ではありません。
品揃えもディスプレーの仕方も悪すぎて全く買う気が起きないので行く気も起きません。
こんな便利でないお店をわざわざ高い人件費を払ってまで24時間営業にしている意味が未だによく分かりません。
実はこちらのセブンイレブンのお店では海外からの留学生を雇っていることが多いようです。
そして彼らが英語が得意ではなかったり現地の法律に詳しくないことをいいことに違法な低賃金で働かせていたり、長時間労働を強いていたりしているようです。
最近もそういった違法労働が明るみに出てセブンイレブンには捜査の手が入りました。
このような違法行為によって人件費を節約していたから夜も店を開けていられたのかもしれませんね。
日本は便利で素晴らしい
話を元に戻しましょう。
オーストラリアでは大抵のお店はきちんと法律を守って賃金を支払っているので、人件費を節約するために給料のレートが高い日はお店を閉めてしまいます。
つまり、平日に仕事が終わって買い物でもしようと思ってもスーパー以外のお店は大概閉まっているので大した買い物もできないのです。
平日にフルタイムで働いている人が買い物をしたかったら土曜日の昼間にでもするしかありません。
私はもう10年以上オーストラリアにいるのでこういうことには結構慣れましたが、平日にどうしても買いたいものがある時にすぐに買うことができなくて未だに不便だと思うこともあります。
それではこれに対して日本はどうでしょう?
みんなが仕事が終わる5時以降が「稼ぎどき」のお店が多いでしょうし、都会なら夜遅くまでやっているところがたくさんあると思います。
さらに、土日ともなればみんな買い物に来るのでお店を閉めるなど考えられません。
こういう面で日本に帰る度に「本当に便利だな」と思います。
便利になるほど忙しくなる
「日本は便利でいい」と言いつつも、私はここで敢えて「日本も5時でみんなお店を閉めるべきではないか?」と提案したいと思います。
「『便利』 なのと『 不便』 なのとどちらが好きですか?」
と聞かれたら不便な方がいいと応える人はまずいないでしょう。
私だって便利な方がいいと思います。
何かを買いたいと思った時に買えないのは時には結構なストレスになります。
それではお店を遅くまで開けるデメリットはなんでしょうか?
お店を開けるということはそこで働く店員が必要ですよね?
つまり店員の誰かしらは夜とか週末に休むことができないということになります。
「給料が出るのだからいいじゃないか」と言う人もいるでしょう。
もちろんです。
基本的にはたくさんお金が欲しい人がたくさん稼ぐのは問題ないと思いますしそれは個人の自由です。
それではお店を開けるのに店員だけいれば事足りるのでしょうか?
違いますよね?
例えばコンビニを想定してみましょう。
コンビニでは朝から晩まで全国のお店を稼働させるために正確に在庫を管理し、正確な時間に品物をお店に供給しないとなりません。
そして、食品などの鮮度が重要な商品は製造して何日も在庫として置いておくことができないので、夜に供給するものは夜に作らないとなりません。
ちなみに現在の日本のコンビニは通常は一日に3回お店に商品をトラックで運んでいるそうです。
また、こういった様々な活動を効率的にサポートするためにシステムを使用するのでそれを運用するための人員だって必要になってきます。
他にもたくさん人が必要でしょう。
つまり、一日中お店を開けるのにものすごい数の人が関わっているわけです。
これらの人が全員「もっとお金が欲しいから夜勤もどんどんやりたい」と思って働いているのでしょうか?
まずそうではないでしょう。
「同僚が体調が悪くて来れなくなったから」とか、「人員が足りないから」といった理由でほとんど強制的に会社に深夜業務をさせられている人はたくさんいるでしょう。
つまり生活が便利になればなるほどサービスを供給するために働かなければならない人が多くなってくるということです。
あなたがサービスや物を買うお客側だったらお店がいつもやっていれば便利で良いかもしれません。
しかしあなたが余程のお金持ちでもない限りあなたも働かなくてはなりません。
そうなると巡り巡って最後はあなた自身も深夜や早朝に働かなくてはならなくなるかもしれないのです。
みんなで休もう
電気が無かった頃は人間は日の出と日の入りに合わせて活動していました。
暗くなったら何もできませんし、寝るしかないですからね。
電球が発明されて人間は夜でも作業ができるようになり便利になりましたが、その分たくさん働かなければならなくなりました。
科学が発達して洗濯機や掃除機など日常の生活で時間が節約できる機械が発明されました。
しかし、現代の人達はそれで余った時間をゆっくり過ごせるようになったかというとそうではなく、結局夜遅くまであくせく働いています。
もちろん電気がなかった時代に戻ったほうがいいと言っているのではありません。
しかし、便利になればなるほど忙しくなり、ゆっくり休む時間が少なくなって疲れる生活になるということです。
お店が全部5時に閉まったら不便かもしれません。
しかし夜に働く人も少なくて済むようになります。
みんなが少しくらい不便な生活でも受け入れられるようになればみんなでゆっくり休むことが出来るのです。
逆に便利さを求めれば求めるほどあなたもさらに忙しくなっていくのです。
お店が夜に開いてなかったら不便でしょう。
でも不便だからといって死んだりしません。
便利=幸せな生活ということもないでしょう。
そういう意味で私はオーストラリアのように週末や祝日の賃金をかなり高いレートにする法律があるのは良いことだと思います。