裁量労働制は単なるサービス残業の合法化。裁量労働制で生産性が上がると信じている人なんているの?

以下の、日本商工会議所、経団連、経済同友会の財界3団体トップの発言を読んで、「またか」という気持ちになりました。

裁量労働制:削除に「残念」 財界から失望の声 – 毎日新聞

三村会頭は「働き方改革は日本の成長戦略の一丁目一番地。労働者が自分の生活パターンに合った働き方を求め、企業がいろんな働き方の選択肢を提供するものだ」とメリットを強調。労働側には「大企業が裁量労働制の拡大で賃金コストの圧縮を目指している」との批判もあるが、三村会頭は「企業が労働者をどんどん働かせるために導入することはないと思う。残業代をケチるために裁量労働制を考えている経営者はゼロとは言わないが、非常に少ないんじゃないか」と反論した。

結局、合法的にたくさん働かせたいだけ

おいおいおい。

今までの日本の企業の働かせ方を見て、そんなこと本気で思ってるのだとしたら、頭おかしいでしょこの人たち。

今まで労働時間が法律で規制されていたにも拘らず、法律を無視して異常なほどの時間を働かせ、毎年3万人とも言われる過労死やうつ病や過労自殺の犠牲者を出してきた日本の会社が、「9時間、10時間働いても、8時間分の給料しか払わなくていいですよ」という法律が採用されて、「どんどん働かせる」のを止めるはずがないでしょう!(笑)

というか、サービス残業なるものが横行している現状では、それを合法化してブラック企業に免罪符を与えるという以上の意味は無いでしょうし、合法となればブラック企業はますます「これは合法なんだから文句言わずに働け」と言うようになるのは目に見えています。

同じような理由で、いくら「裁量労働制では、勤務開始、終了時間は自由になります」と言ったとしても、ブラック企業が本当に「労働者の生活パターンに合った働き方」を許すようになると考えるようなお花畑思考の人などいないでしょう。

日本では圧倒的に雇用する側が強いので、どの程度の量の仕事をいつさせるかは全て会社側が一方的に決め、「会社に都合の良いパターンに合った働き方」になるのは明らかです。

現在でさえ、残業をしないと終わらないような仕事量を与えている会社が多いのに、「決められた時間以上の賃金を払わなくて良い」となれば、8時間で終わるような仕事を与えるだけで満足するはずがありません。

まず、10時間、20時間かかる仕事を与えて、「8時間で終わらなくても終わるまで働け」「8時間以上の賃金は支払わない」となるでしょう。

なにしろ、相手は、労働基準法などどこ吹く風の日本のクソブラック企業たちなのですから(笑)

断言してもいいですが、裁量労働制が採用されたら、「仕事が終わるまで帰るな」「仕事量は会社が決める」「勤務開始時間を変えたい?我儘なことを言うな。みんなこの時間に働いているんだ。客から問い合わせが来たらどうするんだ?自分勝手は許さん」となります。

あれ?これって現状と同じじゃ?(笑)

でも、それが合法になるかどうかは大きな違いでしょう。

そもそも、「残業代をケチるために裁量労働制を考えている経営者はゼロとは言わないが、非常に少ないんじゃないか」などという曖昧な言い方一つとっても、三村氏が本気でそう思ってなどいないことが分かります。

同じ記事からもう一つ。

経済同友会の小林喜光代表幹事は「世界と比して低い生産性の向上が求められる中、今回の事態は極めて遺憾だ」などとするコメントを出した。

いやいやいや。

寝言は寝てから言って欲しいですね!

日本の生産性が低いのは、残業が多くてダラダラ仕事をしているからですよ!

合法的にサービス残業させたからと言って生産性が上がるはずがありません。

たくさん働かせれば生産性が上がると考えているところが老害の証ですね!

結局、日本商工会議所、経団連、経済同友会というのは、今まで日本のブラック企業がやってきた違法なことを合法化させたいだけなんです。

彼らは「会社で働いている人たちが、より良い環境で働いて、幸せになって欲しい」などとは、100%考えていません

裁量労働制よりもやるべきこと

大体、「この職種はみなし労働時間OKで、たくさん働いてもそれ以上賃金を支払わなくていいですよ」などと、国が職業ごとに指定している国など他に聞いたことがありません

もし他の国でもそういうところがあったら教えてください。

そしてもし、そういう国があったら、それによって本当に生産性が上がって、労働者がより良い生活を送れるようになっているのでしょうか?

私は裁量労働制などよりも、雇用者が社員を簡単に首にできない今の制度をなんとかするべきだと思います。

このことは以前にも、「解雇されにくい日本の正社員と即日解雇のオーストラリアどっちがいい?」で書きました。

裁量労働制が目指すところが、「1の仕事をするのに8時間かかる人もいれば10時間かかる人もいるから、時間ではなく仕事量で判断しよう」というものならば、1の仕事を8時間で終わらせられる人を会社が雇えば良いのです。

「1の仕事しかしてないのに、仕事が遅くて10時間もかかる人間に10時間分の賃金なんて払いたくない!」というのが会社の不満なのであれば、会社はその人間を切って、もっと優秀な人を雇えばいいのです。

会社が自由に、会社にとって一番良いと思う人を雇い、そうでない人には出て行ってもらうというのはとても自然なことではないですか?

会社が「この社員は無能だからいらない」と思っても簡単には首にできないようにしているのが現在の法律です。

しかし、そんな状態は会社にとっても社員にとっても不幸です。

「時間内にできないのなら終わるまで働け」と言わなければならない会社は不幸ですし、そういったプレッシャーを受けて夜遅くまで働かせられる社員だって不幸です。

そしていずれにしても、どうしても首を切りたくなったら、会社は追い出し部屋を始めとしたパワハラの限りを尽くして社員自ら辞めるように仕向けます。

「日本は被雇用者が手厚く保護されていてありがたい」「海外はいらなくなったらすぐに解雇されるから厳しい」と言う人がいますが、実際のところは保護されていることで不幸を生んでいる上に、結局は過労死するかうつ病になって会社を辞める羽目になるのです。

会社は解雇をするのに余計な手間をかけなければならなくなり、被雇用者はパワハラで病気になるのです。

「お前は無能だからいらない」と思っているような会社で働いていても社員は不幸になるだけです。

簡単に解雇できるようになれば、「この社員は10時間働かないとみんなの8時間分の仕事ができない。こんな社員に10時間分の賃金を払いたくない」という不満は、その社員を解雇して、その仕事を8時間で終わらせられる社員を新たに雇えば解決するのです。

国が「職種によっては多く働かせても時間通りに賃金を払わなくてOK」というような法律を作ることは、曖昧な、拡大解釈ができる余地を作り出し、結果的に雇用者ばかりが得をして被雇用者は今までと同じかそれ以上に過酷な労働を、「サービス残業=合法」のお墨付きをもらったブラック企業によって強制されるようになるだけなのです。

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かわずん
アンチ・ブラック企業ブロガー