マインドフルネスという言葉を聞いたことはありますか?
詳しいことは別の機会に書くかもしれませんが、私は1年ほど前に育児の関係で精神的に参ってしまっていた時期がありました。
そんなときにこっち(オーストラリア)の精神科医のコンサルテーションを受け、その中で医者に勧められたのがマインドフルネスです。
マインドフルネスって?
この記事ではマインドフルネスを実践するために私が医者に教わったり、その後マインドフルネスを続けていて効果があると実感できた方法を紹介していきます。
マインドフルネス自体の詳しい説明については日本語でも詳しく説明しているサイトがいくつもありますので、興味がある人は検索してみてください。
マインドフルネスの基本的な考え方は、思考を現実に集中させることによって精神的な平穏を得るというもので、仏教の瞑想からその手法を取り入れています。
瞑想というと、「宗教的」とか「怪しい」と思う人もいるかもしれませんが、ここで宗教に勧誘したり怪しげな壺を売りつけるつもりは一切ありませんの安心してください(笑)
マインドフルネスは瞑想から効果のある手法を取り出して、お寺の修行のような長く辛い鍛錬をやらなくても誰でも瞑想の恩恵に預かれるように開発されたものです。
思考を現実に戻す
まず、なぜ思考を現実に持ってくる必要があるのかということを説明しましょう。
「思考を現実に持ってくる」というのは分かりにくい表現かもしれませんね。
この部分はとても重要なので説明しておきます。
人は何かを後悔したり、不安に思ったり、何かに対して怒っている時はその思考(意識)は「現実」にはありません。
例えば、「あんなことをしなければ良かった」「あの人にあんなことを言うべきじゃなかった」と後悔している時は過去のことを考えています。
誰かに対して怒りを感じている時も過去に起こった出来事に対して怒りを感じています。
また、「これをやって失敗したらどうしよう」と心配している時は将来のことを考えているわけです。
こういったネガティブな思考をしてしまうのは人間として自然なことですし、生きていく上で必要なものなので必ずしも悪いことではありません。
私を診てくれた精神科医曰く、「何の心配もしなくなってしまったら人間は動くこともできなくなる」と言っていました。
しかし、過去や将来の事柄について考え過ぎてその思考に深く囚われてしまうと、その思考がさらなる怒りや不安や後悔を呼び起こし、最後には病気になってしまうのです。
マインドフルネスを行うことによって、ネガティブな思考になった時に過去や未来にある思考をすぐに現実に戻し、心を落ち着かせることができるようになります。
ちなみに、マインドフルネスは不安や怒りの感情を否定したり、そのような考えをしないようにするためのものではなく、あくまでも心を平穏な状態に戻すためのテクニックです。
それでは、以下で私が実際に医者から教わった方法を幾つか紹介しましょう。
五感を使う
まずは、五感を使って意識を現実に戻す方法です。
五感 ― つまり、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚です。
それではまず、視覚から始めてみましょう。
あなた今何を見ていますか?
特に深く考えず、何を見ているかを認識するだけで構いません。
例えば、今、植木を見ているのであれば、「今植木を見ている」と意識してください。
次に聴覚を使ってください。
今、何が聞こえますか?
例えば、「外の車の音が聞こえる」と言った感じです。
残りの感覚も順番に試してみてください。
今、何の臭がしますか?
今、何の味がしますか?
今、何の感触がしますか?
何の音も聞こえない場所だったり、口の中に何の味もしない場合もあるでしょう。
その場合は「何も聞こえない」「何も味がしない」で構いません。
これを行うのは座っていても立っていても、騒々しい場所でもどんな状況でも構いません。
順番も上記のとおりでなくても構いません。
五感は全て「現在あるもの」を知覚するので、このように五感に集中することによって、未来や過去にあった心を現在に戻すことができるのです。
この方法は最初の頃は「えーっと、次に集中するのは何だっけ?」「あ、次は聴覚だった」などと考えてしまって少し時間がかかりますがすぐに慣れますし、慣れると10秒程度で出来るようになります。
このテクニックは場所を選ばず行えて、しかも効果が高いので私の好きな方法です。
私は何かネガティブな思考に囚われそうになった時にこの方法を行います。
すると一瞬で意識を現実に戻すことができ、それ以上その思考に深入りすることを防ぐことができます。
呼吸に集中する
呼吸に集中することも「現在」に思考をフォーカスさせるのに有効な方法です。
まず、目を瞑って鼻から一気に空気を吸い込みます。
それから暫く息を止めます。
そして次に口からゆっくりと肺の中の空気が全て無くなると思うくらいまで息を吐き出します。
鼻から吸うのは4秒程度、息を止めるのは8秒、口から息を吐くのに8秒程度かけてください。
これを10セット程度行ってみてください。
私は夜にベッドに入ってから色々考えてしまって中々寝付けない時によくこの呼吸法を行うのですが、結構効果があり、暫くするといつの間にか寝てしまっています。
この方法は上記の五感を使う方法と比べて少し時間がかかるので、時間が取れる時にはこちらの方法を使うのも良いと思います。
ボディスキャン
ボディスキャンはあなたの体のパーツを一つ一つ意識していく方法です。
まず、目を閉じて、頭のてっぺんに意識を集中します。
柔らかい羽根が集中する箇所をやさしく触れていると想像しても良いです。
次に後頭部、顎、喉と意識を移していきます。
意識を移していく速度は一か所に数秒程度で良いです。
同じように、頭部から下も、胸、お腹、ひざ、つま先といった感じで意識を順番に移していってください。
左右の手も肘、指先といった感じで行います。
時間があれば今度は足のつま先から頭のてっぺんまで逆方向に意識を移していきます。
このように、自分の体に意識を集中させることもまた現実に思考を戻す訓練になります。
ネガティブな思考を第三者的に眺める
今後、長期間に渡ってマインドフルネスを続けていくにあたって医者に勧められたのがHeadspaceというアプリです。
私の周りのオーストラリア人の知り合いでもこのアプリを使っている人は結構います。
私は医者とのコンサルテーションが終わった後もずっとこのアプリを使ってマインドフルネスを続けています。
このアプリは評価も高く私もお勧めしたいところなのですが、残念ながら英語版しか無いので英語が分からない人には難しいと思います。
このアプリは有料なのですが、最初のBasicの30セッションは無料なので興味のある方はインストールして試してみてください。
このアプリの中で繰り返し出てくるのが上記で説明した呼吸とボディスキャンです。
そして、もう一つこのHeadspaceの作者が繰り返し言うことは、ネガティブな思考を第三者的な視点から見ることです。
例えばあなたが何かに怒りを感じているとしましょう。
その時にその怒りの感情があたかも目の前にあるように想像するのです。
私がよく行う方法は、目を閉じて、その感情がこぶし程度の大きさの球体のようなもので、それが自分の目から20センチくらい離れた場所に浮かんでいると想像します。
そして、「あ、今自分は怒りという感情を作り出して、その感情は今ここに目の前に浮かんでいるものだ」と第三者的な視線でその「怒りの感情」を眺めるのです。
そうすると不思議なことにその怒りにさらにのめり込んでいくことを防ぐことができ、心を平穏に保つことができます。
もし一回で怒りが消えなかったり後からまたその怒りが蘇ってきた時はくり返し同じことをします。
この方法は怒りだけではなく、あらゆるネガティブな感情に使うことができます。
ポイントは、「あー、今怒りの感情がここにあるんだなー」とか「あー、不安の感情があるなー」とその感情をソフトに他人事のように眺めることです。
私にはこの手法はとても効果的で即効性があるので、よく行っています。
ちなみに、Headspaceの作者は本もいくつか出版しているのですが、日本語訳版のものでは唯一、「からっぽ! 10分間瞑想が忙しいココロを楽にする」という本があるので、もし興味がある方は読んでみてください。
Headspaceの作者が言うには、上記で紹介したようなテクニックはネガティブな思考に陥りそうになった時だけではなく、平時から定期的に行うのが良いそうです。
例えば、勤務時間中に一日3回程度やってみてください。
一番最初に紹介した五感に集中する方法であれば一回に10秒程度で終わります。
どんなに忙しいときでもそれくらいの時間は取れるでしょう?
むしろ忙しいときほど私はこれをやってみることをお勧めします。
私は仕事上で何か問題が起きて、「早く解決しないと」と焦りを感じている時にこの「五感の集中」をすると、一瞬で落ち着きを取り戻します。
また、忙しくてずっと仕事に集中している時は頭も体も休むことを忘れてしまいがちですが、そういう時にもこれをすると頭の中がリフレッシュされて頭が軽くなるのが実感できます。
ちなみに、私は今こうやって記事を書いている時もかなり集中しているので、何回かやっているのですが、それによって息抜きが出来ています。
終わりに
かなり駆け足でテクニックを紹介してきましたが、前半にも書いた通り、不安や怒りといった感情は人間にはある程度は必要なものですが、それに囚われ過ぎてしまうと泥沼にはまり込んだような状態になって抜け出すのが難しくなってきます。
そうすると時間の無駄になるだけでなく、精神的にも病んできてしまいます。
もしあなたがいつも、「色々なことを考えすぎてしまって疲れている」と感じているのであれば、是非ここで紹介した方法を試してみてください。
そしてマインドフルネスに興味を持ったら自分で色々と調べてみてください。