子供番組で分かった日豪の会社の器の大きさの違い

突然ですが私は以前から、「ブラック企業リストのようなものがあればこれから就職する人のためにもなるし、いいだろうな」と常々考えていました。

ただ、それを個人でやるのは無理があるし、不特定多数の人が評価するシステムだと信頼性が低くなるので現実的には難しいと思っていました。

しかも、そんなサイトを立ち上げてブラック企業認定された会社から訴訟でも起こされたらたまりません。

・・・などと考えていたら暫く前に国がそんなリストを公表するようになりました。

ブラック企業リスト、厚生労働省が334社を公表 今後は毎月更新 ハフィントンポスト

厚生労働省は5月10日、長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで送検された企業などの一覧を作成し、公式サイトで公表した。

2016年10月〜2017年3月の間に送検された334件分の内容をまとめたもので、全国の企業・事業場名や違反内容などが記載されている。2016年12月に社員に違法な長時間労働をさせた疑いで書類送検された、電通の名前もあった。

公式には「ブラック企業リスト」という名称ではありませんが、まさか国がこのようなリストを公表するようになるとは思ってもいませんでした。

過労自殺者を出して最近話題になった電通も載っていたりするので、大企業でも手加減しない姿勢は私はとても買います。

今後もきちんとアップデートされていって、新卒の人達が企業選びの際にこのような情報をもっと重視するようになり、過労自殺した電通の社員のような日本奴隷社会の犠牲者が少しでも少なくなっていくことを心から願っています。

自己保身しか興味のない会社

さて、ブラック企業関連の話でもう一つ最近話題になったニュースを紹介したいと思います。

これも結構話題になったので知っている人も多いと思いますが、NHKの歌のおにいさんの横山だいすけさんが退職したのに伴って、その仕事がいかに大変で、しかもいかに報酬がそれに見合ってないかということが白日のもとに晒されました。

横山だいすけお兄さんの月収と厳しい掟がバイキングで暴露され話題に サクッと情報部

この記事によると、月収30万円で、平日は過密スケジュールの中で働き、そしてコンサートがある時は週末も休み無しということです。

そして、彼らに課せられたルール・禁止事項がすごい。

  • 恋愛禁止
  • NHK以外のテレビ番組出演禁止
  • 海外旅行やスキー禁止
  • 自動車の運転禁止
  • 派手なネイル禁止
  • 立ち食い禁止
  • ななめ横断禁止
  • 新宿・歌舞伎町を歩くこと禁止

これを見て本当に呆れてしまいました。

この調子だと、上記の厚生労働省のブラック企業リストにNHKが載る日もそう遠くないかもしれませんね。

この中で唯一、「斜め横断禁止」だけはまあ法律的にも違法となると思うので理解はできますが、それ以外は「これ考えた奴はバカじゃないの?」というものばかりです。

「立ち食い禁止」とか子供に対してならばともかく、大人に注意するようなことではありません。

スキーや海外旅行が禁止されてないだけ子供のほうがマシですね。

ちなみに、これらの厳しいルールの理由は以下のページで説明されています。

超激務で制約多いNHKうたのおねえさん 月給は推定30万円程│NEWSポストセブン

 その上、うたのおねえさんにはさまざまな厳しい掟があるという。たとえば「海外旅行の禁止」。代わりがいないから、事故や悪天候で帰ってこられなくなると困るという理由だ。同じように、けがや事故が怖いので車の運転やスポーツもNGだという。

「どんな時も子供たちの憧れ、お手本でなければいけません。派手なネイルやピアスは禁止だし、歩き食いも禁止。品がないですからね。スキャンダルも御法度なので、恋愛も結婚ももちろん禁止です」

不倫というのならばまだ分かりますが、なぜ、「恋愛、結婚=スキャンダル」という短絡的な思考しか出てこないのか理解に苦しみます。

そのような発想しかできない会社が子供番組を作ること自体が間違っていると思うのは私だけでしょうか?

そこまで彼らに制限をするのであれば、NHKの社長から社員まで全員恋愛も結婚も禁止すれば良いでしょう。

こんなルールでも受け入れられてしまうのは、「仕事第一、家庭やプライベートは第二」、「仕事だから仕方がない」、「給料を貰っているのだから会社の命令に従うのは当たり前」という思想の日本だからでしょう。

オーストラリアの例その1

ところで、オーストラリアにはThe Wigglesという子供向け番組(バンド)があります。

The Wigglesについて、ちょうど日本語で紹介しているページを見つけたので、そこから引用させてもらおうと思います。(ページ内ではYoutubeの映像も紹介されているので興味のある人は見てみてください)

The Wiggles(ザ・ウィグルス)はオーストラリアの最も売れたバンド | Australia Here and Now オーストラリア ヒアアンドナウ

The Wiggles(ザ・ウィグルス)は、オーストラリアの音楽とパフォーマンスを行うグループで、オーストラリアで最も成功したバンドとしても有名です。

オーストラリア以外のアメリカとイギリスを含む英語圏の国でも、子供たちに大人気です。

今のメンバーは、歌、楽器、踊りもできる若い女性と男性を含み、見た目も華やかですが、1991年に結成され、2012年までのオリジナルメンバーは、全員おじさんという、日本の子供向け歌番組ではありえないメンツでした。

~(中略)~

数々のプラチナアルバム、そして、オーストラリア音楽業界最高の栄誉と言われるARIAミュージックアワードの賞を獲得しました。ARIAは、Australian Recording Industry Association(オーストラリアレコード産業協会)の略です。

2千万枚を超えるDVDと7百万枚を超えるCDを売り上げ、コンサートで年間百万人以上を動員するという快挙を成し遂げています。

The Wigglesは日本の「おかあさんといっしょ」と同じく、4人のメンバーで構成されています。

現在のメンバーは2期目に当たり、2012年から活動しています。

調べてみたところ、日本でもザ・ウィグルスという名前で吹き替え版が放映されていたようです。

さて、なぜThe Wigglesの話を出したかというと、上記の「オーストラリア ヒアアンドナウ」のページ内でもちらっと触れられていますが、この番組の中に出演しているメンバーであるEmma WatkinsとLachy Gillespieが結婚したからです。

もちろん、彼らが結婚したのはThe Wigglesに現役で出演中の期間にです。

英語サイトですが、以下のページに結婚時の写真などが載っています。

Two of the Wiggles Just Got Married! See Their Wedding Day Photos | Brides

メンバー全員揃っての写真などもあり、彼らはみんなとても幸せそうです。

メンバー同士で恋愛、結婚など、NHKだったら会社が激怒しそうな大事件です。

この二人は今でもThe Wigglesのメンバーとして活動しているのですが、きっとNHKだったらあっという間にクビでしょうね。

実際、「おかあさんといっしょ」に2008年から出演していた歌のお姉さんの三谷卓美さんは2016年に週刊誌で「熱愛報道」がされて間もなく退職しました。

表向きは自主退職ということになっていますが、退職理由の真相は分かりません。

自主的な退職かもしれませんし、圧力があったからかもしれません。

いずれにしても、上記の厳しい(バカバカしい)ルールに背いたからというのが大きな理由の一つであるということは容易に想像がつくことです。

オーストラリアの例その2

さらにもう一つ、オーストラリアの話を紹介したいと思います。

子供番組ではないのですが、こちらもオーストラリアのテレビ番組で、1999年から2001年まで放映されていたRoveというバラエティー番組の話です。

Rove (TV series) – Wikipedia

この番組はRove Live(番組名で分かる通り、いわゆる冠番組)という男性がやっていたのですが、彼の妻が亡くなった時、彼は5ヶ月近く番組を休んでいます。

In November 2006, Rove Live was suspended until further notice due to the death of McManus’ wife Belinda Emmett. Rove wrote a personal message on the Rove Live website, saying that it “is a very difficult period for all of us and some time away is the best thing for me right now”.

彼は休み始めた当初から5ヶ月という期限を設けていたわけではなく、いつ復帰できるか分からない状態だったようです。

メインであるRoveがいなくなってしまったため、当然、番組は中断しました。

しかし、会社は彼の復帰を待つことにし、その時間帯は代わりの番組を流していました。

いつまで経っても復帰しないのを見て、「もう彼はこの業界に帰ってこないのではないか」と言う人もいたそうですが、5ヶ月後に見事に番組に復帰し、そして2009年に彼の意思で終わらせるまで番組を続けました。

もしこれが日本だったらどうなっていたでしょうか?

前述の「おかあさんといっしょ」の三谷卓美さんの例とは違って実例を思いつかないので、「私の予想が正しい」とは言えませんが、もし5ヶ月も休んだら社会の反応は大体以下のような感じになると思います。

「奥さんが亡くなったからと言って仕事を無期限で休んで会社に迷惑だと思わないのか」

「仕事をナメてる」

「家族が亡くなってもみんな一週間くらいで戻ってくる。彼は甘えているだけ」

こんな意見がたくさん出てきませんか?

それとも、私の日本社会に対する見方は悲観的過ぎますか?

もしかしたら現実にはもっと温かい反応ばかりかもしれません。是非そうだと願いたいものです。

やる気がある人は特に日本の会社に搾取されて欲しくない

さて、ここまでで紹介したNHKと2つのオーストラリアの会社の事例を比べてどう思いましたか?

オーストラリアの会社はメンバー同士の結婚を心から祝い、そしてその後の番組への出演も当然のごとく受け入れています。

そして妻が亡くなって、いつ復帰するのか分からない、或いは復帰するのかも分からない人を待ち続ける会社。

一方で、恋愛禁止だ、立ち食い禁止だ、果ては運転禁止だスキーも禁止だと社員を縛り付けるNHK。

自分の会社の「世間体」とか「カネ」とか「番組」のことしか考えず、社員の幸せなど少しも考えていないことが分かります。

正直なところ、オーストラリアの会社の度量の大きさと社会の暖かさ、そしてそれと比較してNHKの器の小ささを見て日本人としてとても情けなく恥ずかしく感じました。

そもそも、NHKが「恋愛=スキャンダル」と考える元となっているのは、まさに日本の社会がそのように考える傾向があるからです。

そう考えると日本の社会も本当に器が小さくて恥ずかしい。

給料にしてもそうです。

The Wigglesの出演者がどれだけの報酬をもらっているかは知りませんが、月収30万円ということはないでしょう。

番組を卒業した横山だいすけさんは心から「うたのおにいさん」になりたかったと聞きます。

そのためなら給料が低くても・・・と言うのではなく、そのようなやる気のある、能力のある人こそ高い給料をあげるべきではないでしょうか?

横山さんは念願の夢が叶って「おかあさんといっしょ」で仕事が出来てきっと幸せだったと思います。

しかし、それにケチをつけるつもりはないのですが、彼のようなやる気がある素晴らしい人物が、「器が小さく、ケチくさい」 NHKがやっているような番組でNHKに搾取されてしまったのはとても残念に思います。

彼のような素晴らしい人材が(英語が話せないと言う問題は置いておいておくとして)もし、オーストラリアの会社のようなところがやっている番組で活躍することができていたらきっともっと能力を発揮できて、もっと高い給料をもらえて、もっと幸せになれたのではないかと思うのです。

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かわずん
アンチ・ブラック企業ブロガー