旅館業を始めるにはその物件で消防設備が規則通りに設置されていることが求められます。
自分の家と違い、不特定多数の人が泊まる施設ではより厳しい規則になっています。
消防設備が問題なく設置されているかチェックするのはそれぞれの地域の消防署です。
具体的な設置個所や必要数などは消防署に行くと相談に乗ってくれます。
私も実際に消防署に相談に行ってきたので今回は消防設備について書きたいと思います。
目次
旅館に必要な消防設備
物件の規模などの条件によって異なってきますが、以下が私が設置を計画している消防設備です。
自動火災報知設備
規模に関係なく、全ての施設で自動火災報知設備の設置が必要になります。
この火災報知器は単独で動くものではなく、一か所で火災を検知すると他の部屋に設置されている報知器も連動して鳴動するようになっているものを指します。
そして、延べ床面積が300㎡未満の場合で、かつ、建物が2階建て以下の場合には「特定小規模施設用自動火災報知設備」の設置で良いとされています。
「特定小規模施設用自動火災報知設備」というのは、受信機が不要な無線式のものを指します。
現在は3階建てでも無線式のもので認められる特例があるようです。
もし上記の無線式の条件に当てはまらず、有線式にしなければならない場合、家中に配線をしなければならない上、消防設備士という資格を持った人が工事をしないとなりません。
そのため、有線式は無線式と比べると大幅にコストがかかることになるので、ここは無線式で許可が下りる物件を狙いたいところです。
火災報知器を設置しなければならないかどうかは主に部屋の大きさによって決まってきます。
特定小規模用自動火災報知設備|大阪市|消防設備|民泊 – 青木防災(株)
天井高4 m未満の場合、煙感知器が150㎡毎に1台、熱感知器が40㎡毎(耐火建築物は70㎡毎)に1台設置が必要です。
煙感知器は、居間や寝室などの普通の用途の部屋に設置します。
ほとんどの場合、各部屋に1台で足りるかと思います。
熱感知器はキッチンや洗面所、そして収納に設置します。
その収納に設置する際ですが、その面積が2 ㎡を超えている場合、設置する必要があります。
つまり、2 × 1 m 以上もしくは √2 × √2 m 以上の寸法であれば、つけなければなりません。
ここで気を付けなければならない点は、火災報知器同士が連動しなければならにため、無線が届かない場所には設置できないということです。
つまり、他の機器から余りにも離れた場所には設置できないということですね。上記の3階建ての建物などは難しいケースも出てくるかもしれません。
もう一つは、無線式の場合は最大で15個までしか付けられないという点です。
私が狙っている物件は200㎡弱という、かなり大きい戸建なのですが、もしかしたら無理かもと思っていたのですが、ギリギリ15個に収まり冷や汗ものでした。
現在、無線式の火災報知器はPanasonicとホーチキという会社のものがありますが、Panasonicのものは親機に子機が付く形になっており、親機を建物の中心に設置しないと子機と連動が取れなくなるようです。
ホーチキのものは相互連動で、Panasonicのような親機に当たるものは無いので、ホーチキのほうが良いように思います。
火災報知器には煙と熱の感知器のものがあるのですが、キッチンには熱感知器など、それぞれの部屋によって必要なタイプが異なってくるので、不明な場合は消防署に聞いてみると良いでしょう。
誘導灯
人が外に出て行くロゴをあしらった「非常口」と書かれた緑と白のヤツです。
設置場所は管轄の消防署に確認が必要です。
これは基本的に全ての施設に必要となるのですが、今回私が消防署に聞いたところ、懐中電灯が設置されていれば誘導灯は要らないと言われました。
これについては各地域や消防署によってルールが違うと思いますので、必ず消防署に確認してください。
誘導灯を付けるとなると電気工事士に頼んで配線してもらわなければならず、それなりの費用が掛かるので、付けなくて良いのであればそれに越したことはないので助かりました。
一般的には以下の場合に誘導灯が設置不要になるようです。
- 居室の各部分から避難口を容易に見通し、識別できる
- 避難口までの歩行距離が避難階(すぐに地上へ出れる階)の場合は20m以下、それ以外は10m以下
- 1の条件を満たし蓄光式の避難誘導ステッカーを避難口に貼った場合は、避難口まで歩行距離が30m以下であれば不要
懐中電灯
各寝室に設置する必要があります。
盗まれると嫌なので、私は壁から取り外すと点灯するタイプを購入する予定です。
この壁掛けタイプはホテルや旅館に良く設置されていると思います。
今回はこの懐中電灯の設置のお陰で上記の誘導灯を設置せずに済みそうなので、懐中電灯様様です。
消火器
延べ床面積が150㎡以上の場合には必要になります。
設置場所については、建物の構造等が影響してきますので管轄の消防署に相談してください。
避難経路図
現在の部屋から外に出るまでの経路を示したものを各寝室に設置します。
これもよくホテルなどで見かけると思います。
消防署に相談するときの注意点
消防署に相談に行くときには最低でも建物の平面図を持って行ったほうが良いでしょう。
最終的には消防署からの許可を取るには平面図の他に立面図と断面図も必要になり、これらの図面に上で説明してきた消防設備の設置個所を記入して消防署に提出する必要があります。
これらの図面はまだ購入していない建物の場合は不動産屋に聞けば貸してくれる(存在すればですが)と思いますが、消防署に提出するために原本に色々と書き込むわけにはいかないので、原本を元にそれぞれの図面を作成しないとなりません。
幸い私は身内にこれらの図面を作成してくれる人がいるので全てやってもらいましたが、通常は自分で書けなければ業者に任せないとなりません。
あと、消防署でこういった相談に対応してくれる人が忙しかったり、外出している可能性があるので、行く前に予め電話をして確認をしておいたほうが良いでしょう。
余談ですが、私は今まで消防署には全く縁がなかったので、消防署は単に「消防車と救急車があるところ」くらいの認識でいたのですが、こうやって市民の相談を受け付ける窓口や係の人がいるということを知り、新鮮な体験でした。